無条件の存在承認

存在欲求

人には、周りの人達や社会に理解されたい、大事にされたい、認めて欲しい…という「承認欲求」があります。
承認欲求は、多くの行動の動機になります。
特にエネルギーが少なくなると、自己肯定感が低くなり、自信が持てなくなったり、主体性が乏しくなり、無力感に襲われたりします。
強すぎる「承認欲求」は、自己評価を他者からの承認に委ねて、自分の存在意義を確認しようとするので、得られなければ当然肯定感は下がります。
私は自分では結構「自己肯定感」は高い方だと思っていましたが、60歳を目前にした時に、「仕事関連などで必要な時以外に気軽にランチを共にする友達が居ない…」と思い当たって、ものすごく寂しい思いにかられたことがあります。
極端ですが、今までの人生が虚しくさえ思えてしまったのです。
しばらく悩んだ末に、では、誘われなければ自分から誘ってみようと、恐る恐る勇気を出して、古希を迎えた友人のお祝い会を提案して仲間たちと食事をすることになり、楽しい場が生まれました。お蔭様で、私の古希のお祝いも企画していただいて、嬉しい思い出になりました。

マズローの「欲求5段階説」

マズローは、人間の欲求を低次の欲求(外的に満たされたい)から、高次の欲求(内的に満たされたい)の5段階に分けて説明しています。
①生理的欲求⇒ 
②安心・安全欲求⇒ 
③社会的欲求⇒ 
④承認欲求(名誉、尊厳欲求)⇒
⑤自己実現欲求
――となります。

本来は、3番目の「社会的欲求」である、愛と所属、仲間を求める欲求が満たされた後に、4番目の価値ある存在として認められたい「承認欲求」が生まれてくるはずなのに、満たされないままに次の欲求を満たそうとして順番が逆になってしまうところにひずみが起こります。
「承認欲求」は、承認されたい対象によって「他者承認」(他人から認められたい)と、自分自身が自分を認めて満足している「自己承認」の2つのタイプに分けられます。
自分に対する信頼や周りの環境への安心感が持てないと、過度に他者の承認に頼ってしまいます。

「愛着障害」

昨今、「愛着障害」という言葉が心理学用語として使われることが多くなりました。
愛着(アタッチメント)とは、イギリスの精神科医ボウルビーが提唱した概念で、「特定の人に対する情緒的なきずな」のことです。
例えば、赤ちゃんが「お腹が空いた」「おしめが濡れて気持ちが悪い」などと訴えて泣くと、親や周りの大人が世話をしてくれる。生理的欲求が満たされると、その繰り返しによって信頼関係・きずなが生まれます。
これが他者とのコミュニケーションの始まりで、これらの愛着関係が自立心やその後の人間関係や社会性の発達につながっていきます。――これが「愛着理論」です。
幼少期に養育者との適切な関係が結べないと、「愛着障害」がもたらされます。
私は大学の卒論のテーマに、正確な言葉は忘れましたが、母性的養育の喪失による性格形成について選びました。
教育実習でお世話になった養護施設や児童相談所のご協力も得て、中学生を対象にアンケート調査を実施したことがあります。
いくつかの項目で、母性的養育の不足が、想像した以上に性格形成に大きな影響を及ぼしていることが分かりました。
「愛着障害」をもつ彼らは苦痛を感じた時に、周囲の大人に助けを求めたりすることが苦手であったり、逆に初対面の人にも人見知りせずにべったりと抱き着いて不足した愛情を補おうとします。
人との関係の作り方が上手く対応出来ず、大人になっても対人関係や社会性に困難をきたすことが多くあります。

有るがままに寄り添う

人間の成長には、自分のことを無条件に受け入れてくれる存在が必要です。
これが、「自分はもともと価値のある存在」「愛されている存在」だという自己を肯定する基礎となります。
両親や周りの大人から丸ごと受け入れられた経験、いわゆる「存在承認」が得られると、子どもは安心・安全欲求、愛と所属の欲求が満たされて、次の段階の「承認欲求」がかなり満たされます。
私は、小学校5年生で担任をしてくださった女の先生(かなりご年配の先生)に、特にかわいがってもらいました。
お顔や様相は勿論、今でもお名前をフルネームで覚えています。
クラスメイトと一緒に、ご自宅に招いていただいたりした楽しい記憶が蘇ります。
笑顔で、いつまでも話を聴いてくださいました。
この経験は、私にとって大きな自信に繋がっています。
どんなことでも価値判断せずに、丸ごとあるがままの存在を受け止めることは、未熟で凡人の私にはなかなか難しいことですが、これからも学びを深め続けて行きたいと思っています。
そして、コミュニケーションや人間関係に不安や困難を感じている人達に寄り添って、少しでもサポートをさせていただきたいと思っています。

(2020年2月23日 若杉)

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