「依存症」は他人事ではない

衝撃的なニュースからの気づき

数年前、あるニュースで衝撃を受けました。
世界陸上選手権に2度も出場し、国内の大会でも優勝経験のある、トップアスリート。
その女子マラソンの選手が、万引きで逮捕されたという報道でした。
私は、テレビでのスポーツ観戦が大好きで、マラソンもその一つ。
この選手のファイト、粘り強さ、ここぞという時のスピード、とても印象に残って、応援していたので、突然の逮捕のニュースには、「一体、何があったのだろう?」と、とてもショックでした。
その後も執行猶予中にもかかわらず、何度か万引きが繰り返されるというニュースを目にしました。
最近になって、「クレプトマニア」という精神疾患の影響だったと知りました。「クレプトマニア」とは、窃盗癖から依存的になり、衝動的に万引きを繰り返す、いわゆる「窃盗症」のことです。
常習累犯窃盗は、いまや社会問題になっています。
盗む対象は、必ずしも自分が本当に必要なものとは限らず、また金銭的にも高価なものとも限りません。
衝動や欲求を、理性的に、意思の力でコントロールできない点が病的であり、窃盗の行為をしている時には、高揚感や満足感、開放感が得られるけれど、その後に罪悪感や極度の不安を体験します。
拒食や過食などの摂食障害や抑うつ傾向を伴うことが多いと言われます。
スポーツ選手など、極端な栄養管理、体重制限から摂食障害を発病し、満たされない飢餓感から、食べ物やお金がなくなってしまう恐怖にかられ、万引き衝動を引き超すとも言われます。
高齢の女性が、連れ合いを失くしてぽっかりと空いた心の穴を埋めたくてこの症状を引き起こす例も多くみられます。
患者の大半は、自分では病気だとの自覚がありません。
欠落感、孤独感、喪失感…、これらは特殊なものではなく、誰もが人生の流れの中で、遭遇し体験しがちなものです。

誰にでもある依存的なこと

「依存症」とまではいかないまでも、誰しも自分の意志ではどうにもならないことを抱えています。
「わかっちゃいるけどやめられない」
「変わりたいけど変われない(変わりたくない)」
お酒、タバコ、ゲーム、チョコレート、ジャンクフード、インターネット……。
私は健康上の理由から、小麦粉・乳製品・お菓子類…などを控えています。
が、これくらいは大丈夫だとか、今日だけは特別。
もしくは、制限されているものではないからと、多量に食べてしまうことがあります。
ですが、身体は正直で、何かしらのアレルギー反応が現れます。
そこでやっと、歯止めが効いてリセットされます。
万引きや窃盗は、他者に迷惑が掛かるので処罰されますが、処罰だけでは抑止力にならないのが現状です。
では、衝動的な行為は、どうしても抑止できないのでしょうか?
「クレプトマニア」に真剣に向き合い、乗り越えて社会復帰を図ろうとする人たちには希望がないのでしょうか?
私は何故、「クレプトマニア」に、衝撃と関心がむくのだろうか…と思った時、程度の差こそあれ、これは私自身だったのだと気が付きました。
他人事ではなく、日常生活の中で小さなことから、自分の意思を鍛えていく努力の必要性を痛感しました。

コントロールの領域を広げる

昨日、あるセミナーで教えていただいたことが頭に浮かびました。
それは、「きみを理解」という頭文字の教え。
感情をコントロールするときのプロセスです。
き⇒気づく
み⇒認める
(を)
理⇒理解する
解⇒解決する
これを活用して、自分の中にある、醜さ・弱さ・無力感・怠惰…それらの存在から目をそらしたり、逃げたりするのではなく、あることに気づいて、いい悪いの価値判断無く認める。
そして、これらの存在もまた大事な私の一部だと理解する。
最後は「解決」まではなかなか至りませんが、理性や意思の力を地道に鍛えていきたいと思います。
「わかっちゃいるけどやめられない」――だからこそ、何らかの工夫をして、わずかであってもコントロールの領域を広めていきたいものです。

(2019年4月14日 若杉)

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