身体性を取り戻す

身体との対話が必要なわけ
パソコンやスマホを通して世界とつながることが多くなっています。
SNSや身近なニュース、映画や読書、知りたいことがほとんどそこで完結するかのようです。
では、タブレットでストリーミングの映画を観るのと、映画館で鑑賞するのとではどんな違いがあるのでしょう?
画面の大きさの違いはもちろんですが、無意識に感じている感覚がだいぶ違うのではないかと思います。
前者は「視聴」、後者は「鑑賞」という言葉が当てられることが多いですね。
「視聴」とは文字通り、見ることと聴くことを意味します。
私の印象では目の前で進行しているものを見聞きすることに注力している状態で、身体全体への意識は少ないように感じます。
一方の「鑑賞」に関しては芸術作品などに五感で味わうというような印象があります。
映画館では大きなスクリーンで作品の世界を堪能するだけでなく、座席の座り心地や周囲の人の様子、スクリーンの大きさ、空調の快適さなども鑑賞の一部を担っています。
先日、大ヒットしている映画「国宝」を観に行きましたが、そこでも、映画館という場の影響は大きいと感じました。
場をキャッチするのは身体の感覚です。

最近、桜美林大学教授の山口創さんという方の『からだの無意識の治癒力』という本を読みました。
その中に、心の不調を持つ人のほとんどは、身体の感覚が鈍くなっていると書かれていました。
私たちは身体の感覚を感じることで、自分が身体を持って生きているという実感がわいてくるのだとか。
生きているという実感はポジティブな感情と行動を誘発します。
今私たちは生きている実感をどれぐらいもてているでしょうか?
文明が発展し、私たちの社会は大きく変化してきましたが、実は人間の身体は200万年以上も続いた狩猟採集生活の時代に適した姿形や機能を残したまま現代にいたっているということです。
例として、座っているより立っているほうが身体にいいようにできていたり、じっとしているよりも走るために現在のような姿形になっていたりすると書かれていました。
脳が次々と新しいものを創造しても、身体は古い時代のままというのは驚きです。
身体といかに上手につきあっていくのか…。
テクノロジーが加速度的に進化している今こそ、重要なテーマになっています。
まずは日ごろから身体感覚に意識を向けること。
著者によれば、それによって「勘が鋭くなったり、五感が覚醒されたり、いきいきとした感情を手にしたり、さらには思考も深まる」とのことです。
マインドフルネスも「いま、ここ」に意識を向け、感覚を味わうことを推奨しています。
心がけたいものですね。
(2025年9月28日 岩田)





