ドーパミンは快楽物質ではない

脳科学によって明かされたドーパミンの真実

いくつかの脳の神経伝達物質の名前は、多くの人が「それ、聞いたことある」というほど有名になっています。
その筆頭は、ドーパミンかもしれません。
快楽物質とも呼ばれるので、ものごとに熱心に取り組んでいるとき、強いワクワク感があるときは、ドーパミンが出ているのだろうと、私もなんとなく思ってきました。
が、ダニエル・Z・リーバーマンとマイケル・E・ロング著『もっと!』を読み、ドーパミンの本当の性質に衝撃を受けることになったのです。

そもそも、ドーパミンが発見されたのは1957年のこと。
適切な条件がそろうと脳細胞はドーパミンを活性化し、快感をもたらす行動に抗うことができなくなったことが発見されたことがきっかけだそうです。
そして「一部の科学者は、ドーパミンに「快楽物質」の名を与え、一連のドーパミン産生細胞が脳内でたどる経路を「報酬系」と名づけた」と、本書にも書かれています。
ところが快楽物質としてのドーパミンの役割が確定したかに思われたあと、研究者たちが発見したのはドーパミンの本質は「快楽ではない」という事実だったのです。
では、本当の役割とは何なのか?
私たちがなぜしばしば合理的でない行動をとってしまうのかという理由も、実はそこにあるのでした。

恋愛が色あせるのはドーパミンのなせるわざ

多くの人にとって、ハリウッドの著名な俳優たちは恋愛と離再婚をくり返しているイメージがあるのではないでしょうか。
(たまに長年連れ添っているカップルがいると、それが話題になるほどには…)
2度3度と同じことがくり返されても、新たな出会いに情熱を傾けることができるのは、それだけエネルギーが高いということなのかな? などと、私は呑気に思っていたのですが、これこそがドーパミンの働きのひとつであるらしいのです。
今度の相手は今までと何かが違うのではないかという期待が、私たちを行動に駆り立てるというのです。
本文から引用してみましょう。

私たちの脳は予想外のものを希求し、ひいては未来に、あらゆるエキサイティングな可能性がはじまる未来に関心を向けるようにプログラムされている。だが、愛であれなんであれ、それがおなじみのものになったら、その興奮は薄れ、新たな対象が私たちの関心を引きはじめる。

第1章 愛 より

情熱は私たちが可能性の世界を夢見るときに高まりますが、現実に出くわしたときにはしぼんでしまうということのようです。

ドーパミンから現在志向の神経伝達物質へのバトンタッチ

これは最近の我が家の浴室リフォーム体験にも一致します。
当初、どんな色にしようか迷いながら、新しいユニットバスになったら入浴タイムが何倍も気持ちのいいものになるだろうと想像しているときは、仕上がりが待ち遠しく、とてもワクワクしていました。
そして工事が終わり、最初に入浴したときはもちろん最高の気分でした。
1ヵ月以上経った今はどうかというと、そのような高揚感は消えてしまいました。
ただ、今は別な感覚を体感していて、これはこれで悪くないと思えます。
あえて言葉にすると、日々の生活への感謝や穏やかな満足感ともいうべきものです。
実は、このとき私の脳内ではドーパミンから役割を引き継いだ別の神経伝達物質が働いているようなのです。
それが、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィンなどといった化学物質。
名前はよく聞きますね。
「今ここ」の状態を楽しむための、いわば現在志向の神経伝達物質です。
ドーパミンがもたらす期待の快楽とは対照的に、感覚や感情から生まれる喜びをもたらすのだそうです。
ある学者の研究によれば、初期の恋愛(熱愛)は12ヵ月から18ヵ月しか続かないとのこと。
そのカップルが絆を保とうと思ったら「友愛」という別の種類の愛を築かなくてはならず、それを担うのがセロトニンなどだとか。
長くなってしまったので、この辺りで終わりにしますが、ドーパミンの役割を理解することは、恋愛だけでなく、さまざまな依存症の理解、さらには日常の自己コントロールのためにも必要なことだと感じます。
その上で、ドーパミンに適切に働いてもらうことも大事なことですね。
この本の最後の章は「調和」です。
役割があって存在するものたちが調和することの大切さ。
あらゆることに通じる真理がここにもありました。

(2023年5月21日 岩田)

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