与えられた務めを楽しく果たす
私達は劇中の俳優
今朝はオンラインの読書会がありました。
数日前に予習の為、「ストア派哲学入門」の11月の項を読み返しました。
幾つか心に残る項目の中で、『劇中の俳優』というテーマが強く印象に残りました。
哲人エピクテトスが「君は劇中の俳優であり、劇作家の意志に従って役を演じているのだ。(中略)――(どんな役でも)それが君の務めなのだから、割り当てられた役を演じ切るのだ」と語っています。
そしてライアン・ホリデイの解説では、「今日一日、あるいは生涯にわたって私達に何が起きようとも、知力、社会、肉体の面でどんな状態に置かれようとも、私達の務めは、与えられた役割をぼやいたり嘆いたりするのではなく、それを受け入れ演じる事なのだ。」「自分の役を誰よりもうまくこなそう」――と記されています。
これらを簡単な別の言葉で言うと、「適材適所」とも言えましょう。
適材適所とは、その人の能力や特性を正しく認識して、ふさわしい地位や仕事に付ける事ですが、何かを成すときに自ら率先して役割を果たそうとすると、自然な調和が生まれます。
人にはそれぞれ得意・不得意があります。
得意な分野で自分の能力や特性を発揮して全体に貢献できれば、みんなが幸せな気持ちになれます。
心地良い自然に織りなすハーモニー
先月の終わりに、2005年からずっと対話会や旅行を続けて来たメンバーの内、日程の合った5名が友人宅に集まりました。
コロナ禍で、3年近くオンラインでの対話会を続けていましたが、久し振りにリアル勉強会と称して、「お茶会とバーベキュー」を楽しむことになりました。
役割分担を詳細に相談して決めていたわけではありませんが、お薄を点ててくれる人、お茶菓子を手作りで持参してくれる人、お料理を担当してくれる人、最後まで片づけに心配りをしてくれる人、丁寧で細やかなホストのおもてなし…と、とても自然な流れの中で、誰もが満足した充実の6時間。魔法にかけられたような楽しい時間があっという間に過ぎて行きました。
見事な息の合ったハーモニーが展開され、居心地のいい、主体的な適材適所の素晴らしさを実感したひとときでした。
どんな役割も大切なパーツ。例えねじ1本でも不足したり不具合があると、ロケットも飛べません。
すべてが大切な主役です。
ちょっと余談になりますが、朝日系で医療現場が舞台の木曜ドラマ『ザ・トラベルナース』で、中井貴一さん演じる、熱き哲学を持ってさすらうナースが語った言葉が印象に残りました。
「医者は病気を見つけて病気を治し、ナースは人を看て人を治す」
みんなが必要。それぞれが大事な役割なんですね。
ご機嫌な偏桃体を作る
もう一つの読書会は、青砥瑞人氏の「HAPPY STRESS」(ハッピー ストレス)がテキストです。
ストレスと聞くと、ネガティブな印象がありますが、「ストレスと心を通わし、自分の最高のバディにすることができたなら、とっても頼もしい心強い存在となる」と【はじめに】書かれていて、ちょっと構えていたのが、何だか安心して読み進めることができました。
序章は「ストレスと向き合うということ」
―限られた人生、何を脳に刻み込んでいきたいのか―
大事な事は、「内側」の世界と対話する、すなわち自己と対話していく必要がある。
そうすることで、私達人類はさらなる成長、そして幸せを感じやすくなるそうです。
具体的に日常生活で実践して行くこととして、「日常のささやかなポジティブを脳に刻み込む」ことが推奨されています。
旅行などの大きな環境の変化でなくても、道端の草花、散歩中の犬、空、雲、空気、行きかう人々、街並み・風景…から、ささやかなポジティブな側面に目を向けて、少し時間をとって味わうという意識的な時間を持つことから始めていく。
脳に幸せの記憶を蓄積させること、自分の幸せの反応に気づき、その情報を脳に書き込んでいく…想像するだけで、何だかワクワク感が出てきませんか。
最後に、私の一番のお気に入りになった言葉をご紹介します。
神経科学者であるウィル・カニンガムが、『私達の多くは「不機嫌な扁桃体」を持ち合わせている』と言っています。
扁桃体とは、大脳辺縁系の一部で、味覚や臭覚などの情報を、海馬の働きと共に感情と記憶を結び付ける働きを担っています。
意識的に喜びや楽しさを扁桃体に刻み込むことによって、不機嫌ではなく、『ご機嫌な扁桃体』を作っていきたいものですね。
(2022年11月6日 若杉)