物理的時間と心理的時間

年々早く感じられる時間の流れ

今年も余すところ後5日となりました。
人は年を取れば取るほど、時間の経過を早く感じる傾向がありますが、時間を便宜上区切っているのは人間であって、考え方や感じ方は人それぞれに違います。
私は何だか年々時の過ぎるのが早くなっているように感じられ、不思議に思っていました。
また、幼い頃から、「永遠」とか「無限大」という概念がよく分かりませんでした。
一年の終わりに、日頃から疑問に思っていた「時間」について考えて見ることにします。
アマゾンに住むアモンダワ族は、今でも文明社会と隔絶して暮らしていて、「時間」や「日付」「年」を表す言葉を持ちません。
つまり「時間」の概念を持たないので、「過去」や「遠い将来」という概念を持たないそうです。
アフリカ人には人間の活動が、「未発達から発達へ」「前へ」進展しているという概念がない…と、ケニヤの哲学者が語っていたのを思い出しました。
つまり、「将来はまだ体験していないのだから、理解することができない。だから、それは時間の一部分だとは思えず、人々はどうやってそれを考えればいいのかが分からない。」と言うのです。
そもそも「時間」とは、出来事や変化を認識するための基礎的な概念ですから、目に見えるものでもないし触れることが出来るものでもありません。

ヒューマニエンス・「時間」

とここで、毎週録画しながら見忘れていた番組の中に、NHKの「ヒューマニエンス」で『時間』――命を刻む神秘のリズム―― というタイトルがあったことを思い出して、急いで見ることにしました。
「私達は流れる時間の中で生きているので、時間とは、つい私達の外側で規則正しく流れているものと思いがちですが、時間の流れはもう一つ、私達の内側にもある。」
東京大学大学院の上田泰己教授は、生命と時間の研究を重ねて来られ、「地球の自転を身体の中、頭の中に持っている。」と語られます。
ヒトの営みをつかさどる「体内時計」が、身体の至る所に無数にあって、目の奥にある「中核時計」(直径1~2ミリの細胞の塊)が、全ての体内時計を24時間コントロールしているとのこと。
これによって、バラバラな時計を強調して働かせているとは、驚きです。

「今」という時間

私達人間は、時間を区切ることを発明しました。それが「今」という時間です。
動物は瞬間瞬間を生きています。
今がなければ、過去も未来もありません。人間は、「今」を境として過去と未来へと、時の幅を広げてきました。
認知能力の働きは、「今」という時間、「ここ」と言う場所の認知です。
認知障害が起こると、「今」が点在し、「どこ」という空間感覚も分からなくなるようです。
「エピソード記憶」(いつ、どこで、誰と会ったか)があるかないかが、ヒトとそれ以外の動物との大きな違いと言われます。
元々空間把握能力に障害を持っている私は、欠けている能力として、「時間」に深いところで、ずっと興味を持っていたのかも知れません。

「時間」を「道具」として使いこなす

同じだけの時間を過ごしていても、時間が短く感じられたり長く感じられたりするのは、単調な毎日を過ごしているのか、刺激的で楽しい時を過ごしているのか…に、よるようです。
何かのイベント予定があって待ち遠しい時とか、苦しい辛い時期は、時間がゆっくり過ぎているように思うし、ワクワク楽しい時は、あっと言う間に時間が過ぎて行きます。
「光陰矢の如し」「時は金也」というように、「時間」関することわざもたくさんありますが、時間に縛られず、振り回されず、社会生活におけるルールとしての「時間」を十分理解した上で、「時間」を「道具」として上手く使いこなして行きたいものですね。

最後に、私もまだ読んでいませんが、『大人の時間はなぜ短いのか』(集英社書房)をご紹介いたします。ご興味のある方は是非ご一読ください。
著者は、実験心理学ご専門の、千葉大学文学部教授・一川(いちかわ)誠氏です。
心的時計のズレや「時間の錯覚」など、時間を長く(または短く)感じる要因や、時間を長く感じながら日々を過ごす極意などが語られているようです。

与えていただいたこの「スタッフブログ」の掲載。
2週間に一度という予定ですが、いつもテーマに悩み、次回は早めにテーマを意識して…と決意するのですが、担当日は本当に、すぐにやって来てしまいます。
文才や語彙の乏しさに絶望的になることもありますが、実生活での小さな気づきであったり、体験であったり、その中で何か一つでも皆様の心に響く、お役に立つことがお届けできれば…と、私なりに真摯な思いで取り組ませていただいて参りました。
私が一番恩恵をいただいて励みをいただいたことを、年の瀬に、心より感謝申し上げます。
今年も一年、温かくお付き合いいただきまして、本当に有難うございました。
来る年も、皆様方に取りまして、輝かしい一年でありますようにお祈り申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。

(2021年12月26日 若杉)

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