孫子は知っていたけど、呉子は知らなかった…
孫呉と並び称されるといっても
「彼(か)れを知り己(おのれ)を知らば、百戦して殆(あや)うからず」という言葉は、あまりにも有名で私でも知っています。
武田信玄の風林火山もそこに由来していることも。
が、何気なく読み放題の中から選んだ『中国古典の名著50冊が1冊でざっと学べる』を読んだら、著者のこんなことが書いてありました。
『孫子』に通底するのはリアリズムだ。意欲のない人間をあの手この手で鼓舞しても無駄だと達観している。だから兵卒を死地に置く。「ここで死ぬか戦うか」と二択を迫れば、どんな人間でも必死になる。
『中国古典の名著50冊が1冊でざっと学べる』寺師貴憲 著 より
すごいですね。
『孫子』の著者とされるのは中国の春秋時代に生きた孫武という人だそうです。
戦う民はあくまでの道具であり、ひとりひとりを全く慮っていなかったんですね。
乱世の中で覇権を握るにはそのぐらいでなければならないのでしょうが、やるせない思いになります。
一方で、『呉子』は全く違ったようです。
著者は中国の戦国時代前期の将軍・呉起。
なんと生涯の戦績は76戦64勝で残りは引き分けで、一敗もしていないというのが驚きです。
寺師氏はこんなことを書いています。
呉子は兵を大切にし、しっかりと育てる。功績をあげれば、たっぷり報いたうえで、功績をあげられなかった兵にこそチャンスを与える。僕は『孫子』よりも『呉子』が好きだ。
引用元 同上
全く同感です。
自分が兵士の立場なら、孫武ではなく絶対に呉起の部下になりたいです。
組織開発、リーダーシップという観点からも現代的なのは呉起ですね。
あまり注目を浴びることがない『呉子』。
この機会に読んでいるのもよさそうです。
中公文庫『孫子・呉子』(町田三郎・尾崎秀樹訳)が紹介されていました。
(2024年6月30日 岩田)