古民家農家民宿を訪れて

古民家民泊の推進と古民家活用支援

政府は、2015年に兵庫県篠山市を国家戦略特区に指定し、旅館業法の特例を認めました。
そして、兵庫県の丸山地区をモデルに、農家民泊の推進策や古民家活用の支援策を2017年に打ち出して、「限界集落」の地方創生に努め出しています。
また、耕地放棄地は、近隣の都市部の住民が借り受けて農業を始めています。
古民家農家宿泊を開業している施設は全国に広がっており、ホームページを見ると、四季折々の自然に囲まれた素朴な田舎暮らしはもとより、農業体験、陶芸教室、ピザ焼き体験、薪割…など様々な工夫を凝らしています。
何より、一期一会の出会いに温かいもてなしを提供するオーナー達のお人柄が最大の魅力なのは言うまでもありません。
開業して20数年を迎えている古民家もあり、いずれもリピーター率が高く、また訪れた人の紹介で、家族・友人・知人…と輪が広がっています。

私は都会生まれの都会育ちですが、子どもの頃に父の故郷である奈良県・大和郡山市の田舎で、ザリガニ釣りやホタルを見た懐かしい思い出を持っています。
田舎暮らしにさほど思い入れがあったわけではありませんが、今年2月に友人の勧めで、京都府の京北下熊田町下町(しもんじょ)という小さな集落で開業されている「Banja(ばんじゃ)」の2号家、「五右衛門」に7名で、初めて古民家農家に宿泊しました。
昔ながらの「おくどさん」と呼ばれるかまどでの煮炊き、部屋では囲炉裏・薪ストーブ、近代的に改良された「五右衛門風呂」…と、田舎の真冬を楽しみました。
二度目は、10月24日~25日に、奈良県宇陀郡御杖村(みつえむら)にある古民家「おもや」に友人4名で宿泊して来ました。

ここは、築200年余、「差鴨居」という伝統構法による古民家です。
伊勢本街道沿いにあり、奈良県の東の端、三重県との県境に位置して、江戸時代にはお伊勢参りに向かう旅人の宿場町として賑わったそうです。
この村の名は、その昔、第11代、垂仁天皇の皇女「倭姫命(やまとひめのみこと)が、天照大神のご神霊を奉じる大神宮の候補地を求め、この地を訪れた際、その印として自らの「杖」を残したという伝説に由来しています。
この御杖村の村興しを願って、2015年にオープンされて以来、明るいオーナーご夫婦が1日1組限定で田舎暮らしを提供されています。
折しも、この日は強風と豪雨。真っ暗な山道を運転してくださる友人の車の中で、助手席の私は祈る思いで宿に向かいました。
途中、曽爾高原温泉「お亀の湯」に立ち寄り、天然温泉で疲れを癒しました。
まったりとローションに包まれるような柔らかいお湯に、しばしうっとりしました。
ここは一番のお勧めです。時間が無くて、ホントにカラスの行水になってしまったので、あまりに残念で、一同相談の上、翌日の午前中に、今度は心ゆくまでゆったりと堪能しました。
このブログを認めるために私がお願いをして、夕食のお鍋を囲んだ後、オーナーご夫妻とよもやま話を始めたら、ふと気が付くと、何と11時半まで話し込んでしまいました。
外は激しい雨風ですが、何と木造のお部屋はとても静かで、快適に過ごすことができました。
外国の人達も今までに30か国以上の人達が滞在されていて、会話はすべて身振り手振りで。
今まで泊まりに来られた人たちは、子どもから大人まで本当にいい人ばかりで…、問題は何一つ起こっていないと笑顔でおっしゃいます。

「森のイスキア」

私は、ふと青森県の岩木山山麓の「森のイスキア」を思い出しました。
福祉活動家の「佐藤初女(はつめ)さん」が、悩みや問題を抱え込んだ人たちを受け入れて、痛みを分かち合う癒しの場を提供されたことです。
「食は命のうつしかえ」と言われ、心のこもった塩むすびと、丹精込めて育てた野菜などで手料理を振る舞い、多くの悩める人達に寄り添い続けられた方で、マスコミを通じても感動を呼びました。
カウンセリングに携わる私にとっては、素晴らしいモデルのお一人です。
民宿のお仕事は、佐藤初女さんの志とまでは行かないまでも、ホントに人が大好きで、お世話が好きでなければ継続は出来ないことでしょう。
家事もおもてなしも苦手な私には、とても関わることのできない大変なお仕事だなぁとつくづく尊敬を深めました。
これからも、各地の古民家民宿を訪れて行きたいと思います。

(2019年10月27日 若杉)

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