「手の知性」を使う
「イラスト講座」に通い始めた…
実は、手仕事をする人にずっとあこがれをもっています。
画家、工芸家、陶芸家など芸術にかかわる人だけでなく、庭師、大工さんなど。
仕事でなくても器用に裁縫ができるとか、インテリアのリメイクができる人なども…。
自分の手で何かを創造していけるというのはすごいことだし、頭と身体をフルに使っている感じが私からは「ちゃんと生きている」と見えるのです。
ずっとあこがれているだけでは何も始まらないし、実際「ちゃんと生きている」感じになるものなのかどうか、最近、試したくもなりました。
まあ、少し心の余裕ができてきたということでしょう。
何かやってみようかなぁと思い立ちました。
カルチャーセンターを調べて行きついたのが「かんたんイラスト講座」です。
ちょっとしたイラストを苦手意識なく描けたら楽しいんじゃないかという気軽な気持ちで、まずは月に2回大阪梅田に通っています。
1回目は曲線と直線を描く練習に始まって、先生のお手本を見ながら、ネコとイヌの絵を。
2回目はその応用で、子どもの顔など。
完成したのが下の絵です。
輪郭を描くのも私には難しく、ギザギザになってしまいますが、1時間半ぐらい集中した後は結構スッキリします。
手を動かすっていいなぁと感じました。
人が使える3種類の「知性」
手といえば、オットー・シャーマー博士が提唱した「U理論」には「手の知性」という言葉があります。
U理論とは「過去の延長線上にない変容やイノベーションを個人、ペア、チーム、組織やコミュニティ、そして社会で起こすための原理と実践手法を明示した理論」(『U理論入門』中土井僚 より)です。
効果的に新しい何かを実現させていくには、3つの知性を動員し、統合していかなければならないとされています。
3つの知性とは「頭の知性」「心の知性」「手の知性」。
オットー博士は、イノベーションは未来からやってくるものであり、それを迎え入れ、具現化、実体化していくときに、「手の知恵を使う」ことが大切だと説いています。
そういえば、脳地図と身体の部位の相関性を形にした「ホムンクルス」を思い出しました。
脳のまわりを囲む大きな顔や手の一方で、脚は相対的に小さいのが印象的な図です。
大脳皮質に占める割合が大きいのは手と顔、そして感覚なのだそうです。
無意識に使っている「手」ですが、その知恵を意識的に使うことは大事なのだということが感覚的にわかります。
手を使う
『U理論』関連の本はイラスト講座に通い始めてから、改めて読んでみようという気になったものです。
久しぶりに本棚から取り出してみると、付箋がたくさんついていたのに自分でもびっくり…。
ちゃんと読んでいたようですが、ほとんど記憶に残っていません。
もとから記憶力には自信がありませんから、さしてがっかりもしませんでしたが。
改めて読んだことによって、手を使うことに意識的になれました。
おかげで、昨日は居間の窓のカフェカーテン(正式にそう呼ぶのかどうかわかりません)を縫うことができました。
既成のものではサイズが合わないので、何年か前に本当に適当(多分テキトーという方がしっくりきます)に自分でミシンをかけて作ったものがついていました。
時間とともに色あせ、ホコリをまとっていていたにもかかわらず、私にとっては当たり前の風景と化していたために、何とかしようという気にすらなりませんでした。
何事もちゃんと見ることで見え方が変わるものですが、「手の知恵」という言葉を意識してから、改めてそれを見たとき、作り直そうという意欲が湧きました。
前回はただ縫っただけですが、今回は、型紙をつくり、縫い代に合わせて印をつけ、アイロンをかけてから作業するという私にとっては最上級の丁寧さで臨みました。
結果、久しぶりに扱うミシンに苦戦しながらも、なんとか仕上がりました。
上手な方の全く水準には及びませんが、私としては達成感一杯でした。
「手の知恵を使う」にはほど遠い現状ではありますが、まずは意識して手を使うことからかな、と思っています。
(2019年10月20日 岩田)