「一期一会」を少し実感!

「まこと人生、一寸先は闇である」

先月、水泳の池江璃花子選手が白血病であることを公表されました。
突然のニュースに言葉を失った方も多いでしょう。
私も「オリンピックを来年に控えた今なぜ?」と驚きました。
白血病という言葉はよく聞くけれど、実際の治療のことは知りません。
これから彼女はどんな闘いをするのだろう…。
そう思っていたときに出合ったのが加納朋子さんの『無菌病棟より愛をこめて』という本でした。

加納朋子さんは作家。
私も以前『カーテンコール』という小説を読みました。
閉校する女子大を半年遅れで卒業するために集められた学生たちと、彼女たちを見守る理事長の物語です。
ウィキペディアによると作風は「せめて物語の中だけでも楽しいことが起こってほしいという思いから、読後感は温かい気持ちになるような作品が多い」そうで、まさにそんな読後感でした。
久しぶりに手に取ったこの本は、無菌病棟がテーマの小説かと思っていたら、なんと著者ご本人の闘病記。
2010年6月に急性白血病と診断される少し前から話が始まっています。
「まこと人生、一寸先は闇である」というのは、予定されていた夫の文学賞受賞式に出られなくなってしまった時のご本人の言葉。
晴れやかな式を楽しみにしていた自分が、今なぜ病院のベッドにいるのか…。
その思いを吐露した言葉ですが、その響きが不思議にさらりとしています。
辛く悔しい気持ちは当然あったはずですが、作家という職業柄なのか、加納さんの性格なのか、最初から最後まで客観的な視点を失っていないのです。
真剣に治療に向き合いながらも、ちょっとクスっと笑えるエピソードもほどよくちりばめられています。
しかし、その日記も中断している時期があります。
やはり白血病の治療のプロセスは過酷なのでしょう。

お茶会で感じた「一期一会」

話は変わりますが、私は本日お煎茶会に参加しました。
この歳になっても初めてのことです…。
初心者である私はもっぱらお隣の方の作法を真似ることに精一杯で、しつらえやお菓子に込められた配慮を感じる余裕はほとんどありませんでした。
茶道に由来することわざに「一期一会」がありますね。
今この瞬間が二度とないこととして、主客が誠心誠意その時間を大切にすることです。
余裕がなかった私ですが、今日ふとこの言葉が少し実感をもって感じられた気がしました。
お茶席を準備された方々の真剣なおもてなしの心が自然に伝わってきたのかもしれません。
そして「一期一会」は「人生、一寸先は闇」につながっているなぁと思いました。
誰もが先のことはわかりません。
だからこそ今を大事にするということなんですね。
体感してはじめて、知っていると思っていたことがそうではなかったと気づきました。
闇というと、どうしても暗く、恐ろしいというイメージがつきまといますが、実際はただ暗くてよく見えないだけ。
闇が晴れて思いがけない景色が広がってくればその感動もひとしおです。
加納さんは抗がん剤治療を経て、弟さんからの骨髄移植を受け、現在ご活躍中です。
池江選手をはじめ、闘病中の方々がお元気になられるようお祈りいたします。

(2019年3月3日 岩田)

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