若杉章子の一文字ブログ10「種」

今回は、『種』という字を選んでみました

『種』たね、シュ。
同類のもの。原因。

種類、同種、異種、雑種、亜種、別種、品種、種名、火種…。

種という言葉から、すぐに浮かぶのは『種の起源』という本。
1859年に出版された、イギリスの博物学者、チャールズ・ダーウインの著書。
「生物は、自然淘汰によって、適者が生存し、それが蓄積されて進化する」と唱えた進化論です。

「自然淘汰」「適者」「進化」…、気の遠くなるような長い長い年月をかけて、生物は進化を遂げてきたのでしょう。
何かが生まれるには、目に見えない「種」が既に潜んでいます。
人間が生まれるには、無数の「種」が、先天的に与えられているし、また後天的にも、与えられ続けます。
その種を、自分のあり方、生き方で、芽を出し、花開き、実を結んでいくものが決まります。

書きながら、ぼんやりと思考が動いています。
怒りや恐れ、悲しみや苦しみ…、奥深くて、意識化できていない感情(「火種」)があって、或る時、表に飛び出してくる。
「こんなはずではなかったのに…」
「こんなことが言いたかったわけではないのに…」
「どうして、こんなことになってしまったのか…」と、
自分で制御できない、マグマのような得体の知れないものがあふれ出てくることがあります。

最近、友人が、手術が必要な大病に罹られたと聞いて、複雑な思いが交錯しています。
深いところで、今のままで前に進むことを止めてくれる、有り難い出来事、生き方、あり方を見つめ直す、いわゆる「種」が発動してくれた気がするのです。

私も、生死を分ける大病をしたことがありますし、後遺症が残る病気も経験してきました。
ですから、友人にも、慰めや励ましの言葉が出てこないのです。
出てきたのが、病気をすることで気付いたこと、大切に思っている仲間たちが傍にいるよ――という言葉でした。

病気の症状や、治療法を模索する以上に、大きな「愛」に包まれていることに気付くことができれば…。
友人の報告に、自分の生き方を、深く問われた気がしています。

与えられた『種』を、只、無意識に生やすのではなく、最適な時期に、意識的に花を咲かせ、実を結び、また土に返していく…、
そんな生き方ができれば…と思うこの頃です。

(2017年7月25日 若杉)

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る