第1~4のポジション

「わたし」と「あなた」の位置

私たちに見えている世界は通常「自分の目から見えた世界」です。
10月2日のブログでバイアス(認知の歪み)の話を書きましたが、誰もがバイアスの中で生きているので、見えた世界も歪んでいます。
例えば、自慢めいた話をするAさんという人がいた時、Bさんは「自信があっていいな」とうらやましく感じる一方で、Cさんは「自分の話ばかりして、不愉快な人」と感じるかもしれません。
Bさん、Cさんそれぞれのフィルターによってとらえ方が変わるからです。
NLP(神経言語プログラミング)には、ポジションという考え方があります。
第1のポジションは「わたし」、第2のポジションは「あなた」です。
最近の仕事の中で、家族や職場の人間関係で対立に直面している人の話を聴く機会が多いのですが、そこで語られることは、ほとんどが「わたし」の視点です。
自分にとって不快な態度をとられたら、多くの人は本能的に自分に意識が向かい、自分を守るための思考や行動が自然に出てきます。
すると、自分がどれだけイヤな思いをしているかを感じながら、相手の悪いところを探し、非難するようになる、それが「わたし」の視点から起こりがちなことです。
「あなた」の位置(NLPでは実際に場所を移動します)に立つと、相手がそのような態度をとった理由に思いを馳せ、そのときの気持ちを感じることが出来ます。
すると、それまで「わたし」だけだった世界の中に「あなた」が加わり、ふたりの関係をどちらの立場からも感じることができるようになるのです。
やってみるとわかりますが、相手への理解が少し深まるだけで、自分のとらえ方が変わることが感じられるものです。
例えば上のCさんがAさんとの関係で、Aさんの位置(第2ポジション)に入ってみたとき、自慢するAさんから何が見えているのか、なぜ自慢したくなるのかを直感的にわずかでも理解することができるというわけです。

第3のポジション

私たちが問題ととらえていることの多くは、視野が狭いことで生じているといわれます。
視野が広くなるととらえ方も変わり、問題でなくなることがあるということです。
ただ、「わたし」だけの世界に「あなた」が加わることで、視野は広がりますが、それだけでは十分ではありません。
第三者の存在があるからです。
わたし(Cさん)が対立しているAさんを見ている状態を、第三者であるDさんからは客観的に見られます。
Dさんの位置が第3のポジションです。
実際にDさんの位置からCさん、Aさんを眺めてみると、「Cさん(わたし)は自分の方が上であると思っているから、Aさんの自慢を苦々しく感じているんだなぁ」、「Aさんも本当は自信のないところがあって、逆に自分を自慢したくなるのかな」などと、感じられることがあります。
その上でCさんである自分に戻ってみると、Aさん、Dさんの視点を世界に引き入れ、とらえ方が広がった感覚が得られます。
さらに第三者はDさんだけではありませんから、違うバックグラウンドをもったEさん、Fさんを想像し、イメージの中で第3のポジションに立ってもらうこともできます。
ワークのような形でなく、多様な意見を聴くことでも、見えている世界を広げ、とらえ方を変えることにつながります。

さらに第4のポジション

第1~3のポジションは平面的な位置関係を広げていくものですが、NLPにはさらに第4のポジションというのがあります。
これは、上から眺めるようなイメージです。
鳥の目という表現でもいいですが、私はすべて俯瞰する神様のようなイメージをもっています。
「お天道様が見ているよ」などと言われるのも、この位置ですね。
「わたし」と「あなた」と「三人称の人たち」までをできるだけ視界におさめ、今の状況がどう見えるのかに意識を向けられると、「問題」はさらに違ってみえるものです。
理想的なポジションですが、なかなかそこに意識を切り替えられません。
それでもやはり4つのポジションについて知っているのといないのとでは、大きく違います。
日常で問題に直面したときに、5回に1回ぐらいはポジションのことを思い出せるといいなと思っています。

(2022年10月16日 岩田)

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