存在力を磨くとは?
長く続いている対話会の魅力
年齢、性別、職業も全て異なる、まさしく多様性のメンバーで、長年月1回のペースで続けているミーティングと称する「対話会」があります。
近況報告や目標などの意見を私なりには真剣に話したつもりだったのですが、決まってメンバーから「何のために…」とか、在り方・生き方、意義や目的を問われるので、初めの内は本当に面倒くさくて話すのも参加するのも億劫でなりませんでした。
それがいつの間にか気が付けば、何と4年半が過ぎました。
何故脱けずに続けて来たのかと振り返ると、深いところで私にとってそれらの問いはとても大切だと思えたからです。
綺麗な言葉で理論理屈を並べ立てても、根本の動機の部分が上滑りであれば、行動にも結果にも結び付かないし、何より、誰の何の役にも立たないと理解していたからだと思います。
今では、この期間がとても有難く思え、近い内に何かが具体的に生み出されそうで、心待ちにするほどにすらなりました。
存在そのものの活性化
私が10年来師事している、山崎啓支先生が2016年に刊行された『コーチング・ハンドブック』は、センスの磨き方が語られていますが、この本では技術や方法論ではなくて、「存在そのもの(Being)の活性化」が大切だと繰り返し述べられています。
最近特に、山崎先生のセミナーのなかでも、「存在力」という言葉がよく使われます。
「存在力」とは、存在する力という意味の造語ですが、分かりやすく言い換えると、オーラ(=雰囲気)があるとか、存在感とか。影響力や人間力、総合力とも言えるかも知れません。
存在感は目に見えるものではなく、その人自身の内面から滲みでてくるような、いわゆる「空気感」のようなものだと言えましょう。
存在そのものが、人に何かしらの影響を与えていく。身近に関わる人だけでなく、その影響力は組織全体、社会や世界にまで広がっていくような…。
思えば私が仕事を推し進める中でも沢山の方々にご支援をいただき、その存在に大きな影響を受けて来ました。
中でも「存在力」を考えた時に真っ先に思い出す方がいます。
私がお出会いしたときは、ご高齢でもう会長職に就かれて第一線を引かれていましたが、毎日服装を整えて会長室に出社されているだけで社内に凛とした空気が漂い、静かな中にも存在感にあふれた方でした。
祖父との関わりを知らない私にとっては、包み込むような慈しみの愛を教えてくださった方でもあり、親しく投げかけていただいたお言葉以上に、かもし出される存在から、多くの学びをいただきました。
余談かもしれませんが、ブログのお陰で数々の場面が思い浮かび、懐かしく、一層感謝が募ります。
在り方と場がすべて
一昨日、学びの友から頂いた言葉がとても印象的でした。
それは、何事にも「在り方と場がすべてだ」と言うのです。
カウンセリングをさせていただくときも、対話会を開くときも、本当に場に臨む自分の心の在り方がすべてを決する――、なるほどと納得です。
ともすれば、喜んでもらえるような結果を出したいとか、役に立ちたい貢献したいとか、自分の思いが頭をよぎります。
自分が主体になっていると、目の前の相手も全体も見えません。
私自身も、上手くいったと思えても実際は自己満足に過ぎず、相手に気づきや影響をほとんど与えることができていなかったことに気づいて、心痛く反省したことも思い出されます。
自分の心の在り方を純粋にして、相手と場に集中することの大切さを痛感します。
「読書会」での新鮮な気づき
先回1月16日付けの岩田のブログに掲載されたオンラインでの「読書会」に、私も参加しました。
指定本は、ライアン・ホリデイ著の「ストア派哲学入門」です。
この本は3つのパートに分かれていて、1月は「ものの見方」のパートで、「曇りなき精神」がテーマになっています。
1月1日~31日まで毎日の哲人の言葉に、日常に落とし込んだ解説が付けられていて、読書会では各人が読み込んで、一人2か所の心に響く日付と言葉を選んで、発表していくのですが、それぞれ選ぶ箇所が違い、そのコメントをお聞きするのが興味深い場です。
私は、1月4日のマルクス・アウレリウスの『自省録』からの言葉、「三大哲人」のなかのストア哲学の重要な三原則を簡潔にまとめられた核心部分に興味が惹かれました。
『――ものの見方を制御せよ。行動をきちんと方向づけよ。自分ではどうにもできないことを受け入れよ。――それができれば十分だ。』
もう1か所は、1月29日の「自分の仕事に集中する」という項目が気になりました。
解説に、「今日はあれこれ考えるのをやめて、目の前のことに集中してみよう。」さらに、「自分の仕事をしっかり果たすことだけに集中しよう。」と書かれていました。
私は、この文章を見るまでは自分がどう発言発表しようかと考えていたのですが、ふと我に返って、今日の私の仕事は?と思ったときに、「在り方と場づくり」「存在で場を支える」という言葉が明確に浮かんで来ました。
ご参加くださった方たちが、何よりも楽しく居心地よく、意見を交換しながら学ぶ場を、そして、進行を積極的に支えるフォロワーを意識したら、皆さんの発言に自然と笑顔で応対できて、とてもクリアな思いに満たされました。
存在力は、背景的に「場を整える、場を支える、場をつくる」役割も有るのだなあと、実感したできごとでした。
何よりも、読書会での学びが日常にすぐに役立ったことは、嬉しい経験でした。
今日は、別のグループでの「読書会」。
同じテーマでもメンバーが違うと、また新しい発見があって楽しみです。
(2021年1月23日 若杉)