無数のパーソナリティを生きる
多重人格とは
私は、夜寝る前に好きな本を読むことと、ナンプレ(数独)を日課にしています。
図書館では著者で本を選ぶことが多く、先日何気なく手に取ったのが、百田尚樹氏の「プリズム」という本。
百田尚樹氏は「永遠の0」「海賊と呼ばれた男」などの著名な作家です。
百田氏の本は今まで読んだことがなかったのですが、パラパラ本をめくっていたら、「多重人格」というテーマと、主人公の一人の名前が「岩本」という名で書かれていて、私の旧姓だったので、興味が湧いて借りることにしました。
二重人格や多重人格は、昔は原因が分からず、憑依現象だと思われていたようですが、今は精神病に挙げられ、「解離性同一性障害」と呼ばれています。耐えられない状況を無理やり耐えようとすることから別の人格が生まれ、それを繰り返していると、解離性同一性障害を引き起こすことになります。
私はあまり詳しくなかったので、どんなことが原因になりやすいのか、調べてみました。
1.極度のストレス
発症する人のほとんどが、幼児期から児童期にかけて虐待など強い精神的ストレスを受けています。
日本で多いのは、過保護でありながら支配的な家庭環境によるストレスが原因のケースです。
親の言う通りのいい子でなければならないといった過度のストレスから、別の人格を生み出してしまうのでしょう。
2.安心できる居場所がない
学校でのいじめや家庭内暴力などから、安心できる居場所がなく、一人で抱え込むことが出来ない量のストレスを感じると、主人格のままでいることが困難になります。
「今、傷ついているのは自分ではない」と言い聞かせて、あまりの苦しさから逃れるために、ストーリーを作ろうとします。
3.重症のPTSD(外傷性精神障害)
災害や事故など、自分の生命に関わる危険に冒されたこと(心的障害)によって発症します。
その特徴や症状は?
1.他の人格を知らない。
「交代人格」と言われ、主人格から離れて別の人格になっていた場合、主人格に戻って来るまでの間は「記憶喪失」の状態になっています。
2.自殺願望がある。
「記憶喪失」の時間が多くなると、自分はおかしくなってしまったのではないかと苦しみ、自殺を考えたりすることもあるようです。
3.子供の人格など、性別・年齢は様々。
4.記憶が曖昧。
5.自覚がない。
そこで思い出すのが、「24の人格を持つ男」と呼ばれた、ビリー・ミリガン。1977年に、オハイオ州の連続強姦及び強盗の容疑で逮捕・起訴されましたが、のちに「解離性同一性障害」であると主張し、精神鑑定の結果、1978年に無罪判決が下されました。
精神治療が開始されてからも、人格が統合されるまで、長い年月が掛かったようです。
百田尚樹氏の著書「プリズム」は、多くの資料を参考にして、小説風ではありますが病理的にも信憑性が高く、興味深く展開されています。
「ミステリアスな恋愛小説」と見る向きもありますが、私は無数のパーソナリティが内在する様子や、「主人格」と合わせて12の「交代人格」との関わり方など、詳細な描写がとても勉強になりました。
誰もがもっている仮面
私達のパーソナリティの中にも、無意識が作り上げたいくつもの仮面(ペルソナ)が存在しています。
これらは、自分を護るために作られたのですが、多くの他の人達を理解することができるという長所にもなります。
それぞれのアイデンティティ(パーソナリティ)は、不調和で対立していますが、明確な目標が定められた時には、調和・一致することがあります。
ネガティブに感じる時は、あるパーソナリティを肯定できず、自分で自分を嫌いになり、極端に劣等感を抱くことすらあります。
しかし、どのパーソナリティも時と場に応じて、役に立つために作り出されたものです。
まずは、自分がどんな時にどんなパーソナリティが出現するのかを、良く知っておく必要があります。皆様も、一度お暇な時にリストアップしてみてください。
私は、学んでいくうちに二重人格も多重人格も、上手に健全に、適材適所の使い分けができるようになればいいなあと思いました。
(2019年10月13日 若杉)