「妬み」とのつきあい方
『正しい恨みの晴らし方』から
「妬み(ねたみ)」という感情はやっかいです
自分が持っていないものを持っている、自分より優れている人に出会った、そんな時あなたはどんな気持ちになりますか?
羨ましい?
それとも妬ましい?
羨み(うらやみ)と妬みって、どう違うのでしょう?
シンプルな洋服をおしゃれに着こなしている、仕事ができる、料理が上手、外国語が堪能…、そういう優れた点をもつ相手に対して、素直に「すばらしいですね!」という賞賛の言葉が出るようなら、「羨み」はあっても、「妬み」はないでしょう。
では、「妬み」とは何か?
そしてどう対処したらいいのでしょうか?
脳科学者・中野信子さんと心理学者・澤田匡人さんの共著をご紹介しつつ、考えてみたいと思います。
「妬み」は2種類ある
澤田さんが担当した部分に、「妬み」を2種類に分けるのが心理学の研究のトレンドだと書かれています。
羨みに近い「良性妬み」と、ネガティブなニュアンスの強い妬みである「悪性妬み」だそうです。
「良性妬み」は自分もそうなれるよう努力しようという向上心の礎となります。
センスのいい人を羨ましいと思ったら、自分も近づこうと努力します。
仕事ができる人からはやり方を学ぼうとします。
他者と比べて劣っていることがわかっても、相手を目標として自分を向上させる行動を起こすとなれば、「良性妬み」は成長にとって必要なものですね。
一方、「悪性妬み」は自分より優れた能力や幸福を手にしている人をみて、公正でない、相応しくないと思われるときに抱くものと書かれています。
本書では、毎日遊んでばかりで自分よりも成績が悪かった友人が、自分が不採用になった企業に親のコネを使って内定をもらった、といった例があがっています。
同じ状況なら私もきっと妬むだろうなぁと思います。
同時に、妬んでいる自分に後ろめたさや嫌悪感を覚えるはずです。
それはなぜでしょうか?
まず、「妬むことははしたないこと」という思い込みがあるのが一因でしょう。
素直に人の幸せを喜べる人でありたいという理想が強すぎて、そうでない自分を受け入れるのが難しいのです。
しかし、妬まない人なんていないはず。
そう思うだけでもちょっと嫌悪感が薄らぎます。
さらに「妬むことで自分が劣っていることをつきつけられる」といった現実もあります。
勝手に比べて、その人の方が優れていると自分が判断しただけですが、「自分が劣っていることに気づき苦しむのはその人のせいだ」ぐらいの乱暴な理屈で妬みが発動します。
誰だって自分が優れていると思いたいもの。
どちらの理由も人間らしいといえばらしいのです。
「妬み」にどう対処したらいいのか?
澤田匡人さんの研究によると、私たちは妬むと、努力するか、諦めるか、攻撃するかの三択を迫られるそうです。
当然ながら「攻撃する」に直結しやすいのは、「悪性妬み」の方です。
悪性妬みはうまく対処できなければ、悪口を言いふらす、相手を傷つけるなどマイナスの行動を生みやすくなります。
人にはシャーデンフロイデとよばれる他人の不幸を喜ぶ感情があるといわれます。
妬みの対象になる人が困難な状況に陥るのをみると、そうした感情が働き、一時的に満たされる気分になるかもしれません。
しかし、長い目でみるとそうした満足感は自分を堕落させます。
「妬み」にどうつきあうのか、その処方箋として澤田さんが書いているのは、まず深呼吸して、
1.自分が何を妬んでいるのか考える
2.自分の妬みの原因をあぶり出す
3.妬みの感情を脇に置いて、目の前のことに没頭する
でした。
妬みを悪いものととらえることなく、それから目を背けることなく、距離をおくということです。
まずは妬んでいる自分に気づくことからですね。
(2019年10月6日 岩田)