「怠惰な自分を知っているからこそ…」

私は三人兄姉の末っ子だったこともあり、比較的、自由気ままに育ちました。
一般的に子供たちは好奇心が強く、日常の様々なことに興味や関心が湧きます。
が、もの心が付き始めると、自分の思うようには環境も人も動いてくれないことに気づき始めます。
私も、今でこそ「苦悩が自分を広げ、成長させてくれる」と分かるようにはなりましたが、若いころは『人生は苦悩の連続である』ことが受け入れられませんでした。
どうやったら苦労や苦悩から逃れて、幸せや成功の道が歩めるのか…としばしば考えていたことを思い出します。

先日、クライアントから「仕事が面白くない」と、ご相談を受けました。
いろいろとお話を伺う中で、毎朝初めの1時間で自分の好きな簡単な仕事をやり終え、後の6時間に気の進まない仕事に取り組んでいらっしゃることが分かりました。
時間配分に問題があるのでは…と、お互いの気づきの中で、最初に嫌な仕事から手を付けて、「楽しみを後まわしにする」ことを実践されることになりました。
初めは、かなり苦戦されたようですが、面倒なことから取り組むと、後の楽しみがモチベーションとなってやる気が出てきたと言われました。

ほとんどの子どもは、人生の早い時期に配分の過程を学びます。
楽しみを後まわしにする能力は、とくに宿題をすることで訓練されます。
小学生の孫は、入学以来、学校から帰るとまず手洗い・うがいを済ますと、すぐに宿題に取り組みます。
宿題が終わってから、おやつを食べたり、テレビを見たり、公園に遊びに行きます。
その間、幼稚園の下の子も、静かにして協力をしています。
親子のルールが守られ、親にせかされなくても自主的な流れができてきます。
一方、先に遊んだりして、嫌なことを後まわしにすることが習慣づくと、衝動的な生き方につながりやすくなります。

私達は、問題を徹底的に受け止めてうまく解決し、その過程で苦しみを引き受けながら学び成長していく、つまり、苦しみを引き受ける「訓練」が大切になります。
主体的に苦しみを経験する技術のひとつに、「楽しみを後まわし」にすることが挙げられます。

私は、前日に「翌日にやるべきこと」を忘れないようにメモ書きしています。
些細なことも含めて、大抵は時間の流れに沿って、ある時は優先順位に項目を挙げています。
最後の方には、手が付けられなくてもいいけれど、意識しておく必要があって、早晩やらねばならない事柄も挙げておきます。
一つ一つやり終えてチェックがつくのは楽しみです。
日々、ボンヤリしているうちにも、時間はあっという間に過ぎてしまいます。
自分が怠け者で、追い込まれないと動かないことを充分承知しているからです。

この『怠惰』の思いは、精神的な成長を妨げる大きな要因です。
私達の心の中には、小さいけれども成長したいという思い、変化や発達を願い、
新しいもの、未知のものに惹かれる部分があります。
が同時に、古く慣れ親しんだものにしがみつき、如何なる変化や努力も恐れ、安全・安心の箱を求めて、苦しみや辛いことから逃れようとする部分もあります。
これらは、誰しもが持つ共通の葛藤です。
健全に成長し、誰かに貢献していきたい自分。いろいろに出来ない理由を並べたてて、やらないこと、怠惰な面を覆い隠している自分。

何かをしても、何もしなくても時間は過ぎていきます。
いつも、「どう生きたいのか?」と、自分の内で問いかけます。
肩書、環境、年齢、経験…、これらからくる不安や恐れは、何の言い訳にもならないことを、自分が一番よく知っています。
いま自分にできること、大事だと思うこと、お伝えしたいこと、分かち合いたいこと…をひとつずつ丁寧に取り組んでいきたいと思います。
具体的には、いよいよ9月から、新しいセミナー開催に取り組みます。
詳細は次回(6月23日)のブログで発表させていただきます。
この告知は、怠惰な私を逃がさないために、敢えて書かせていただきました。

(2019年6月9日 若杉)

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