変革は過去を終わらせることから始まる
「解凍」「混乱」「再凍結」
月1回のオンライン読書会では今、山口周さんの『武器になる哲学』を読んでいます。
今日はその3回目で「第2章『組織』に関するキーポイント」の前半でした。
ここではマキャベリ、ジョン・スチュアート・ミル、フェルディナンド・テンニース、クルト・レヴィン、マックス・ヴェーバーの5人の考え方が紹介されています。
どれも興味深かったのですが、参加者の感想からは、クルト・レヴィンについての声が多く上がりました。
クルト・レヴィンは19世紀末から20世紀半ばを生きた心理学者ですが、私には多くの知識はありません。
「解凍=混乱=再凍結」モデルについても、今回初めて知りました。
このモデルでは、個人や組織が変化していくための3段階を説明しています。
第1段階の「解凍」は、これまでの思考や行動の様式を変えるための準備の段階。
多くの場合ここで必ず抵抗が起こるので、慎重に進める必要があるとのこと。
第2段階は「混乱」。
新しいものを受け入れたとしても最初は戸惑いや苦しみがあり、以前の方が良かったという声が噴出しがちな時期。
ここを乗り越えるためには、やはり十分なサポートが必要だということです。
第3段階は「再凍結」。
新しいものの見方や行動様式に適応していく段階です。
ポイントとなるのは変化が「解凍」から始まっているということ。
確かに古い家屋の土台が老朽化していたら、一旦家屋を解体し、土台を造り直さなくてはなりませんね。
ただ、組織において「解凍」は簡単でないことは容易に想像がつきます。
自発的にはなかなかできないことも、外的状況がそれを可能にするなら、結果的には僥倖といえるのかもしれません。
個人にも3段階のプロセスがある
本の中では、ウィリアム・ブリッジズという臨床心理学者が、同様のプロセスを個人のキャリアの問題について指摘しているという紹介がありました。
転機をうまく乗り切るためのステップをやはり3段階で、「終焉」→「中立圏(混乱・茫然自失など)」→「開始」と説明しているということです。
ここでも変革は「終焉」からです。
今日ある番組を観ていたら、13歳で失明したという方が「神様が自分を不自由な状態にしてくれたから、今がある」というようなことを話されていました。
想像の範囲でしかありませんが、その方もきっと目が見える状態が終わった時は一時的に混乱したことでしょう。
が、やがて教師としての人生を開始され、良き伴侶を得て、幸福な老年を迎えるに至ったのです。
人生の転機に見舞われた時、「終わり」に直面することはツラいものです。
つい目を背け、焦るような気持ちで「何かを始める」方に意識を向けてしまいがちです。
ブリッジズによれば、転機をうまく乗り切れる人は「何が終わったのか、何を終わらせるのか」という問いにしっかりと向き合うことができた人だそうです。
先の例に挙げた方も、自身の失明から目をそらさずに「終焉」に向き合ったのではないかと思いました。
組織も社会も世界も、個人の集まり。
確かに直接大きな集団に影響力を発揮できる人は多くはありません。
が、バタフライエフェクトという言葉もあります。
どこかの小さな変化が予期せぬ場所で大きな影響を持つ現象のことをいいますが、ひとりひとりが小さなバタフライです。
まずは自らの3段階をしっかり生きることが大事ではないかと思っています。
(2023年10月8日 岩田)