考え、信じたことが人生をつくる

休んではいけないという強迫観念

この夏の忙しさから解放され、少しのんびりしながら、いろいろな本を読んでいます。
メイソン・カリーの『天才たちの日課』は、こういう時にうってつけの本。
クリエイティブな人たちが実際にどんな習慣をもっていたのか、垣間見ることができます。
面白いと思った人のひとりがH.L.メンケン(1880~1956)という人。
アメリカの批評家でジャーナリストだったそうです。
こんなふうに書かれています。

メンケンは一日の仕事時間を次のように分けていた。午前中に原稿を読んだり手紙を書いたりする(メンケンはすべての手紙に対し、受け取った当日に返事を書き、生涯を通じて少なくとも十万通の手紙を書いた)。午後は編集の仕事をして、執筆は夜、集中してやる。信じられないことに、自分では怠け癖があるといっていた。「たいていの人間と同じように、元来怠け者で、いつものらくらするチャンスをうかがっているんだ」。1932年の手紙に、メンケンはそう書いている。

『天才たちの日課』より

彼は自分を怠惰だと信じていたために、自由時間をもつという贅沢を自分に許さなかったといいます。
さらに64歳になったとき、「これまでの人生をふり返り、唯一の後悔はもっと必死で働けなかったことだ」と書いたそうです。
実際には他の人と比べて倍以上の仕事をしていたとしても、私たちは自分でそう認められなければ、休む許可を自分に与えることもできないのですね。

波があるのが自然の法則

「人は考えた通りの人間になる」というジェームズ・アレンの言葉を引くまでもなく、私たちは考え、信じたことの結果を引き受けています。
メンケンのような生活には程遠いですが、私自身も彼にシンパシーを感じるところがあります。
長年、休日であっても何もしないということがあってはならない、というような強迫観念をずっと抱えていました。
「いました」と、過去形になっているのは、少しずつその観念を緩めることができたからで、最近は罪悪感なく休むことができるようになってきました。

今年は8月末をピークに、特に忙しかったので、今ホッと一息ついているところです。
自然には波がありますが、私たちの日常にもいろいろな波があります。
忙しさのピークには、同時にこなさなければならないことが押し寄せてきて、嵐の中でもがくような時間を過ごすことになります。
それが終わると今度は凪のような期間がやってきて、ふいに何をしたらいいのか迷うことになります。
こうした波は人によって年単位であったり、季節や月単位かもしれません。
人生にはこうした波があることを信念としてもっておくのは悪くないでしょう。
右肩上がりに進むべきものだという信念だったら、止まったり、少し下がるだけで不安になります。
が、一旦落ち込んでもまた上がると知っていれば焦ることもありません。
しばらく休んだらまた、動き出す…。
年齢と共にそのサイクルもゆっくりになり、波もゆるやかになるのかもしれませんが、自然の法則に逆らわず、かつ自分自身の行きたい方向を見失うことなく進めたら、と願っています。

(2022年9月18日 岩田)

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る