老いを受け入れ、出来ることを大事にする

古着を再生する道

先日実家に行った時、兄嫁のお姉様が古い着物で作られたという、洋服や手提げ袋を見せてもらいました。とても素敵なデザインで、驚嘆しました。
もう着なくなった着物や帯をオリジナルで作り直して、施設や必要とされる所に贈り続けていらっしゃるとのこと。
今では材料となる古着や端切れを購入して作られているとお聞きして、姉も私も母から受け継いだり、自分の若い頃の着物や帯が、今ではただ思い出として残しているだけという品々の生きる道ができたことがとても嬉しく、心から協力を申し出ました。
そのことから、もう使い道がないとか、役割が終わったとか思い込んでいた事柄でも、アイデアや技術で活かす道があって、しかも喜んでいただける場に届けることができるということを教えられて、何だか晴れ晴れとした希望が湧いてきました。

「80歳の壁」を読んで

最近、身体の動きや歩行に少し違和感があったり鈍くなったりして、気持ち的にもマイナス思考に陥りがちでしたが、古着の再生にも刺激を受けて、これからの生き方を広い視野から多角的に見つめてみようという気になって、書店に出向きました。
話題の本のコーナーで、『80歳の壁』という和田秀樹先生のご本に目が留まりました。
最近「徹子の部屋」にも出演されたりしていて、ご承知の方も多いと思いますが、和田先生は高齢者専門の精神科医です。
私が以前に講演会を主宰していた時にご登壇いただいたこともあり、懐かしさも相まって、すぐに購入しました。
「人生百年」と言われる時代になって、――この壁を超えたら、人生で一番幸せな20年が待っています――という見出しに魅かれました。
日本にはいま100歳以上の方が8万6千人いらっしゃるそうです。
令和2年の調べで、日本人の「平均寿命」は、男性が81・64歳、女性が87・74歳。
ところが、男性は9年間、女性は12年間、病気や認知症などで寝たきりになったり、誰かに介助されながら生きて行くという平均期間があるそうです。
誰もが人生の最後を迎えるまで好きなことをして、好きなものを食べ、どこにでも行けて、自由に自立した生活をしたいと願っています。
このように、心身ともに自立して健康でいられる年齢を「健康寿命」といいます。
その年齢を聞くと、少しザワつきますが、令和元年の統計で「健康寿命」は、男性が72・68歳、女性が75・38歳。
できることなら、ある程度身の回りのことが自分で出来て、元気で健康に過ごしたいものです。
昨年の調べで、85歳以上の男性が208万人、90歳以上の女性が192万人にも上るそうで、この数字にもちょっと驚きました。本当に、「人生100歳」時代に向かっているのですね。

最期を迎える時の2つの道

1つは、「いい人生だった。有難う。」と満足して逝く「幸せな道」。
もう1つは、「ああ、あの時にこうすれば良かった」とか、「なんでこんなことに…」と、後悔して逝く「不満足な道」。
著者は、「あなたはどちらの道を選びたいですか?」と問いますが、答えは言うまでもありません。
「幸せ」とは、その人の主観によるもの。つまり、自分がどう考えるかによって決まってきます。
やはり、まずは老いに向かって「自分がどういう年寄りになりたいのか?」を考えることが大切なようです。
どうせ老いるなら、「こういう年寄りになってやろう」という気概を持ちたいですね。
私はずーっと、「可愛いおばあちゃんになりたい」と思っていました。
今のところ、まだまだ穏やかな善い人には程遠いので、学びと努力が必要です。
80歳からの人生は、70代とはまるで違うと書かれていて、「生老病死」の大きな壁が怒涛のように押し寄せてくる――と。
この目の前に現れる壁を越えていくヒントは、突き詰めると、『老いを受け入れて、出来ることを大事にするという考え方』――妙になるほどと納得しました。
著者は最後に、やはり「日々を楽しく暮らす」という発想が大事で、日々を気楽に一日一日を過ごしていくことが、80歳の壁の乗り越え方かもしれないと語られています。
さて、私は「どんなことが楽しい、幸せだと思うのか?」、「ねばならない」「~するべき」という枠を外して、率直に考えたいと思いました。
今は、80歳の壁を健康で超えて、ちょっぴりわがままで、可愛いおばあちゃんになって、誰かの何かのお役に立てる「幸齢者」(「高齢者」の言い換えで、和田先生の提案)になりたいと思っています。

(2022年9月12日 若杉)

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る