紙の本はなくなってしまう?

紙の本を買う理由

最近本を買うことが増えました。
定額で電子書籍が読めるサービスも利用していて、それはそれで手軽でいいのですが、すでに電子書籍で所有(厳密には所有しているわけではないらしいですけど…)している本も、紙で読みたいと思うことが多くなったのです。
例えば、ケン・ウィルバーの『インテグラル理論』。
副題は、「多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル」というので、かなり難しく感じられる本です。
理解できたというわけではないのですが、歴史観や未来への展望が興味深くて、過去に電子書籍として購入しました。
一旦すべて読んだものの、もちろん内容が頭に入ったというわけでもないので、最近もう一度読み返したいと思いました。
自分で驚いたのですが、スマホで本を選択してページが開いたとたん、なんとなく読む気が起こらなかったのです。
紙の本なら、手にとってパラパラとページを繰り、気になったところをさっと読むということができるのに、電子書籍だと勝手が違うということに改めて気づいたというのが理由です。
ブックマークやらページをジャンプしても元に戻れるなどの機能はあるものの、紙を扱うような利便性はありません。
他の人にとっては気にならないことなのかもしれませんが、それが今回特に気になってしまったのです。
結局紙の本が欲しくなって、注文しました。
そして重さや厚さを手で触れて、目で見て感じることができるのもいいし、装丁のこだわりを見て取ることができるのも紙の本の良さだということを改めて実感したのです。
実際『インテグラル理論』では、タイトルの文字に厚みを持たせていて、手で触れるとそこが少し盛り上がっていることを感じることができます。
残念ながら、電子書籍ではそれはありません。
また、意外に本の幅が広くなく、全体的にスリムに仕上がっているというのも、手に取ってみて初めてわかりました。
目の前に実体があり、それを五感で感じることができることの豊かさを感じた次第です。

便利さはもちろん捨てがたい

とはいえ、すべての本を紙で読みたいというわけでもありません。
とりあえず内容を知りたいというものなら、スマホがあればすぐに読める電子書籍は便利です。
最近紙の本を買うようになったからといっても、8割から9割ぐらいは電子書籍になっています。
実際、読みたいものを見つけたらその数秒後には読めるというのはすごいことなのに、それが普通になっています。
紙の本は重く、注文して手元に届くのにも時間がかかる。
あるいは買いに行かなくては手に入らない、などというのがデメリットだとすると、電子書籍はそれらからは無縁ですね。
また、文字の大きさが変えられるというのも、老眼が進んでくるとありがたいし、ついでに気に入ったところをスクリーンショットするときれいにページを保存できるというのもメリットです。
その恩恵には感謝しかありません。

選択の基準をもつことが必要になっている?

電子書籍の良いところを挙げましたが、良いところしかないというものは世の中にはほとんどありません。
先に挙げたようにやはり紙の本にも良いところがあるのです。
改めて、紙の本はなくなってしまうのか?
という問いに対して、考え方はさまざまでしょう。
私は、多くの人が大切に感じる本は紙媒体として残っていくのかなと思っています。
ただ、大切に感じる本というのがどういうのかは人によるので、印刷される本の絶対数は減ってしまうのでしょうね。
もしかしたら芸術品のような扱いになってしまうのかもしれません。
一方で時流に合わせた簡便さを追求した本は電子書籍のみとなるのではないでしょうか。
新しく便利なものが次々に生まれ、古くからあるものと共存するような状態において、私たちは選択を迫られます。
新しいものだけを取り入れる、新しく便利なものは使うが古くても自分にとって価値のあるものは意識的に選択する、とりあえず新しいものには尻込みする、など。
この中で2番目の態度はなかなか大変です。
自分にとって何が大事なのかを良く知らなければ選択ができないからです。
無条件に受け入れる、無条件に拒絶するというというのはわかりやすい一方で、自分にとって何が大事で何が必要なのかを考えずに生きるリスクを抱え込むことになります。
時代が複雑になった分だけ選択にエネルギーを使わなくてはならなくなりましたが、だからこそ自分を本当に豊かにするものについて考える機会として今を捉えることが大切なのではないかと思います。
紙の本を買うようになったということから始めたのに、何だか重くなってしまいました…。

(2021年11月21日 岩田)

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