自分では認めがたい精神疾患

まず自覚すること

何だか気分がスッキリとしない、ちょっとしたことにイライラする、意欲がわかない、物事をつい悪い方へと考えてしまう…など、誰にでもありそうな症状ですが、このような状態が長く続くと、もしかすると「こころの病」なのかもしれません。
例えば「うつ病」は、「心の風邪」と言われるくらい誰もがかかりやすく、心身のストレスが重なると不安やイライラ、食欲不振、睡眠困難…などに陥ってしまいます。
「うつ病」は、早めに治療を始めれば始めるほど、回復も早いと言われています。
精神疾患の治療の第一歩は、「まず本人が自覚すること」から始まります。
とは言っても、「依存症」「認知症」他、各種障害は今でも偏見が強く残っていて、なかなか自分で認めることは難しいものです。
身体の不調は認めても、自分が精神疾患だと自覚することに抵抗が起こってしまいます。

微笑み(ほほえみ)うつ病

近年になって、うつ病にも種類があることが分かってきました。
私も聞き慣れない言葉でしたが、その中の一つに「微笑みうつ病」があります。
身体の不調はあるのだけれど、誰かと一緒に居るときは常にニコニコと笑顔を絶やさず、外見からは病気には見えません。
この病気を知って今になって考えると、小学4年生、中学3年生、大学4年生の時に、まさしく私はこの「微笑みうつ病」に掛かっていたのだと思います。
小学4年生での発病のきっかけは、一緒に住んでいた「祖母の死」でした。
私にとって、初めての家族との別れでした。
心に抑うつ症状を抱えていながら、両親や周りの人達に心配を掛けまいと、日常生活は普段通りに振る舞っていたので、誰にも気づかれませんでした。
一人になると極端に落ち込んで、食欲がなくなり夜は眠れない状態が続きました。
ある日学校での授業中、突然目の前が真っ暗になって、黒板の前に居た先生が、まるで望遠鏡からのぞいた小さな円の中で踊るような姿が見えた途端、とうとう気を失って倒れてしまいました。
どれだけ時間が過ぎたか分かりませんが、気が付いた時は、保健室のベッドの上でした。
先生に呼ばれて駆け付けて来た母の心配そうな表情が、今でもはっきりと思い出されます。
まだ小さな子どもだったので、睡眠導入剤を処方されて、結構早くに元の生活に戻りました。
その後、家の移転や進路決定という人生の節目での再発を余儀なくさせられてしまいました。
「微笑みうつ病」は、統計的に見ると「努力家で負けず嫌い、世間体を気にする人に多い」と言われています。
私は、両親が働いていたこともあって、負担や心配を掛けまいという思いは、かなり強かったように思います。
ちなみに、「うつ病」の治療法は何よりも「休むこと」。仕事やストレスの掛かる現場からまずは距離を置くこと。
そして、自分の弱みを見せられる人、辛いことを無条件に聴いてくれる人の存在がとても大切です。

SOSのサインを見逃さない

カウンセラーを志すようになって、一見悩みなど無さそうに見える人が「大丈夫です」「心配ありません」と語られる言葉の裏に、SOSのサインが隠れていることに気づく体験を何度かしてきました。
他人に頼ったり、弱みを見せることを良しとしないで頑張って生きて来られたのでしょう。
私は年齢を重ねて、最近特に、テキパキと物事を処理したり、今まで簡単にできていたことが困難になったり…、理解するのに時間が掛かったりしてしまいます。
幸い、周りの人達に恵まれて、快くサポートしていただいています。
今では、恐れず恥じずに、弱さをさらけ出して甘えさせていただけるようになりました。
その分私は、これからも一層、人の痛みやSOSのサインに、より敏感に寄り添っていければと思っています。

(2020年2月9日 若杉)

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