世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
眠れなくなった本
寝る前に本を読むことは、私にとっては大袈裟に言えば日常の中の至福の時間です。
横になって本を手に取り、活字を追う…。
しばらく読んで眠くなったら、電気を消す。
シンプルな日常です。
ただ時々、困ったことが起こります。
本によっては、読み進めてしまった結果、ついには頭が冴えて眠れなくなるのです。
だから、どの本を選ぶかということが大事になってきます。
小説などは厳禁。ストーリーが気になって眠るどころではありませんから。
というわけで、気をつけながら読書タイムを楽しんでいるわけですが、先日思いがけず眠れなくなった本がありました。
山口周著『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』です。
半分まで一気に読んだのが12時前。
そろそろ寝なくてはと本を閉じて寝る体勢に入ったものの、結局その後2時間半ほど寝付けませんでした。
“経営における「アート」と「サイエンス」”
実は、この本、昨年出版された頃に一度読んでいます。
その時も確かに面白く感じたのですが、2度目の今回の方がインパクトを感じました。
読み手の状況によって、本の印象は変わってくるものですね。
肝心の内容ですが、変化の速い現代においては、経営における意思決定は「サイエンス」(論理的、言語的で再現性があるために、誰もが同じ解に到達しやすく、模倣もたやすい)だけでは不十分で、「アート」が必要だというものです。
「サイエンス」が「論理・理性」であるのに対して、「アート」は「直観や感性」です。
本の冒頭部分に、VUCAという言葉が紹介されていました。
国際会議などでよく使われる言葉だとか。
「Volatility=不安定」「Uncertainty=不確実」「Complexity=複雑」「Ambiguity=曖昧」という、今日の世界の状況を表す4つの単語の頭文字を組み合わせたものだそうです。
現在のような変化の早い世界においては、組織の中でも「アート」と「サイエンス」のバランスを意識しなければならないといいます。
読んでいくと、「アート」とは「真・善・美」の基準に根差した「美意識」だということが協調されていることに気づきます。美しいということは、倫理的であり、誠実であるということ。
コンサルタントである著者は、経営という観点で話を進めていますが、これは個人においても同じことがいえるはずです。
自分の判断の基準がどこにあるのか?それは真・善・美につながるのか?
そうした問いの上に生まれる直観・感性を大切にしたいものです。
(2018年4月29日 岩田)