歳とともに記憶力が曖昧になるのは進化だそうです
ダイヤル式の鍵の番号を忘れた…
6月に2泊3日の旅行をした際、キャリーバッグにダイヤル式の南京錠をつけました。
番号の設定は4つの数字の組み合わせです。
なじみのある数字に決め、旅行では支障なく開閉しました。
自分には簡単な組み合わせだと過信し、どこかに控えておくこともしませんでした。
数字を忘れたことに気づいたのは2か月後。
8月にサークルの合宿に行くという次女がそのキャリーバッグを使うことになった時です。
見ると、ファスナーの片方の引手にロックがかかった南京錠がついていました。
最初に浮かんだ疑問が「何番だったんだっけ?」
明らかに4桁の数字の記憶が飛んでいたのです。
いくつか心当たりの数字を合わせてみたものの、どうしても開きません。
モノの出し入れは可能だったので、結局娘は鍵としての役目を果たさない南京錠をつけたまま合宿に向かいました。
彼女が帰ってから、改めてyou tubeの動画を参考に開けようと試みましたが、やっぱり無理…。
結局、諦めてしまい込んでしまいました。
年齢とともに記憶力が悪くなるのは、そうプログラミングされているから
なぜこんなにもすっぽり記憶が抜けるのだろうかと思いつつも、最近は忘れることをある程度受け入れている自分がいます。
年齢とともに仕方がないことなのではないかと…。
そんな時、今週読んだ脳研究者の池谷裕二さんの本に思いがけない言葉がありました。
少し引用させていただきます。
大人になると「最近どうも記憶力が悪くて」と嘆く方がいます。
これは記憶能力が劣化したのではなくて、そう変化するよう積極的にプログラミングされているのです。
正確無比な記憶は、曖昧に覚えることよりも、演算としては遥かに低級です。
コンピュ-タプログラミングを行ったことがある人ならば理解いただけると思います。
正確にデータを保管するのは簡単ですが、大人の脳のようなファジーな記憶をコンピュータで再現するのは、人工知能などのように相当に凝ったプログラミングが必要になります。
子どもから大人になるにつれて記憶力が曖昧になるのは、回路演算からみると、けっして退化ではありません。
逆です。進化なのです。
これによって応用性や融通性という大きな利点を獲得することができます。
歳をとったほうが物の道理がよく理解できるのは、記憶の性質の経年劣化の恩恵なのです。
(『できない脳ほど自信過剰』より転載)
記憶力が曖昧になるのはむしろ進化であるとは!
驚きとともにちょっと励まされたような気がしました。
そして、脳は失敗経験を通じて上手に学習するという実験のデータも紹介されていました。
失敗も脳にとっては応用性を獲得するために必要なことだとわかっていれば、過度に恐れる必要もないということになりますね。
南京錠の結末
さて、私が南京錠の番号を忘れたことは一旦失敗に分類されました。
ふと思い立って開けることに挑戦しようとしたのは、池谷さんの本を読む前日でした。
2ヶ月前に悪戦苦闘していた時に、4つの番号を地道に組み合わせていけば理論的には3時間ぐらいで開けられるはず、と夫から聞いた言葉が急によみがえってきたからです。
時間のある時に30分ずつでもやってみようかな、という軽い気持ちで、くだんの南京錠を手に取りました。
一番上の数字についてはだいたい目星がついていたので、残るはあと3つの数字。
1つずつ数字を回すこと30分…。
それでも開かずにちょっと休憩…。
再開して10分ほど経った時、ふいにその時が訪れました。
ある番号に合わせたとたん、あっけないほど簡単に鍵が開いたのです。
達成感というよりは拍子抜けしたような気持ちでした。
同時に、数字自体はほぼ思っていた通りだったのに、組み合わせの仕方が違っていたために開かなかったことが判明しました。
とりあえず今回の失敗は地道な作業でリカバーできました。
ただ、正確な記憶を保持する自信はないので、4桁の数字は忘れないうちにノートに書き留めました。
(2017年10月14日 岩田)