Win-Winについてのトピックその3
前回のトピックは何をWinとするのかは人によって違う、でした
3月26日の聴き方のレッスン最終回で扱ったマトリクス(下図)について、何をWinととらえるのかは、その人の価値観やものごとを見る視野によって異なるということについて書きました。
トピック③
自分の中の2人の自分にもマトリクスが当てはまる
『インナーゲーム』を著したティモシー・ガルウェイという人は、テニスのコーチでした。多くの人を指導するうちに人間の中には
2人の自分がいることに気づき、それをセルフ1、セルフ2と名づけたのです。
セルフ1は口やかましい上司に似ていると、ガルウェイは言います。
何かにつけて命令する上司は、その通りの結果を出さない部下を叱ります。
すると、部下は上司の言うことだけをやった方が安全だと感じ、指示待ち族になります。
部下の個性や能力の特性は尊重されなくなり、結果的に常に上司を越えるパフォーマンスを出すことはできません。
親子の関係も同じです。
親がいちいち子供に口出しをすると、子どもは親の顔色をうかがうようになります。
自由な発想や行動が制限され、消極的になるか、逆に反動で思い切り反発をするかということになります。
親の言いなりになっている状態は親にとってはWin-Lose(本当はどの親も子供の幸せを望んでいるとしても、結果的にはそうなりがちです)。
また、反発して決裂するようなことになれば、Lose-WinもしくはLose-Loseとなります。
他者との関係と同じことが、私たちの内面で起こっている
セルフ1は、自分に対して判断・評価し、命令し、叱咤激励する存在。
セルフ2は、実行する存在。(山崎啓支さんの『コーチングハンドブック』では「無意識」だと書かれています)
セルフ1が、常に自分の行動を評価し、命令し続けると、セルフ2は本来の力を発揮できなくなります。
「ちゃんとしてなきゃダメだ」「もっと~した方がいい」などというセルフ1の言葉が常に聞こえている状態では、目の前のことに集中するのは難しくなります。
ガルウェイはセルフ1を静かにさせ、判断ぐせをやめさせることが第一歩といいます。
もちろん簡単なことではありません。
まずは、自分の中のセルフ1の声を聴くことではないかと思います。
レストランなどで会話をしている時に流れているBGMには気づきにくいものですが、意識を向けるとどんな曲が流れているのかを知ることができます。
セルフ1の声もどんな言葉が流れているのかを知ったら、それをセーブする方法を探ることができるということです。
ガルウェイは、その上で、セルフ2を信頼することだといいます。
セルフ2にこんな状態を実現してほしいと「お願い」をしたら、あとは信頼して任せる。
セルフ1からのプレッシャーがなくなると、今までできなかったことができた、と思えることがあるものです。
お願いの仕方、信頼の仕方も試行錯誤が必要ですが、そのようなセルフ1とセルフ2の協調関係が理想的だということですね。
まさに内的なWin-Winと言えるのではないでしょうか。
ガルウェイ流に言うと、「リラックスした集中」がもたらされ、その時、人は最高のパフォーマンスを実現できるということです。
理想的なWin-Winですが、その状態は長く続くことはないように思われます。
「今、リラックスして集中してる」と意識した途端に、集中が途切れるのですから…。
それでも次のWin-Winに向かい、徐々に精度を高めていくということでしょうか…。
(2017年4月11日 岩田)