最近面白かった本②

『不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。』

著者は宮下友彰さんという方で、「古典教養アカデミー」というのを主宰しているそうです。
図書館で借りて、何気なく読み始め、あっという間に読み切った本です。


内容は、全10章それぞれに1つの古典が紹介されていて、そこから著者が、何を学んだかが書かれています。
古典というと、なんとなく名前は知っているけれど、実際に読んだことはないという人がほとんどかもしれません。
正直に言えば、私もそのひとりでした。
この本で紹介されている古典とは、
『ゴリオ爺さん』『罪と罰』『ドン・キホーテ』『(旧約聖書)ヨブ記』『ハムレット』という読み物に加え、
哲学から、スピノザ「自由意志」、ヘーゲル「アウフヘーベン」、カント「自律」、ニーチェ「貴族と奴隷」が紹介されています。
最後の第10章は、2500年前に成立したヒンドゥー教の物語『バガヴァッド・ギータ―』で締めくくられてします。
自分がちゃんと読んでいないものばかりであっても、著者が受け取ったメッセージについては、共感できることが多かったです。
たとえば、スピノザは「自由な意志は存在しない」と言っています。
お店で何かを買った際、自分で選んだと思っていても、果たしてそれは何事の影響も受けずに自分でものごとを選んだと言えるのかということです。
その前に宣伝広告を見た、誰かが使っているのを見た、たまたま目についた…など、さまざまな原因がからみあって結果が生まれただけかもしれません。
自由意志を信じると、あらゆる行動に対して自責思考になりやすく、失敗した場合に後悔が生まれるといいます。
人は間違い、ミスをする生き物。
「あの時の自分にはその選択しかなかった」と認めることで、自分にも他者にも寛容になれるということを、著者は自らの失敗の例を出しながら説明しています。
自由については、やりたいことを欲望のままに行うことは自由ではないというカントの話も面白かったです。
カントによれば「自由」とは「自律」であり、欲望の主人となって自分が決めたルールに従うことだということです。
なるほど、ついだらだら過ごしてしまったあとに虚しさが残るのはこれですね。
とはいえ、ずっとカントのように自律を意識するのも大変です。
スピノザとカントを自分の中でうまく使い分けることを試してみるのもいいかもしれません。
この本を通して、古典を読む価値を再認識しましたが、単に読むだけではなく、そこから何を汲み取るのかが大切だとも感じました。

(2026年6月14日 岩田)

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