研修で与えられる課題は、私の課題

人間の喜びの本質は、誰かの役に立つこと

子どもの頃は自分本位で自由奔放に生きてきましたが、社会生活を経験する中で、周りの人達や全体に意識を向けて調和を考えることができるようになり、大人に成長してきたと自分では思い込んでいました。
が、客観的に振り返ってみて、他人や周りに気づかいをしているようで、実は、「自分が周りの人にどう思われているか」とか、「どのように見られたいか」というように、気づかいは人にではなく、「意識は「自分」にあったことに気付かされました。
本質的には、「自分本位」の生き方は、全く変わっていなかったのです。
和田秀樹さんの著書『80歳の壁』の中に、「80を過ぎたら我慢しない生き方をする」とか、「認知症は必ずやって来る。ならばいまのうちにしたいことをする」と書かれているのを読んで、なるほど、そうかもしれないと納得してしまいました。
しかし、「ここまで我慢をしてきたのですから、幸齢者(高齢者)はもっと自分を喜ばせるための行動をするべきです。」という、寄り添った優しい言葉ではありますが、何か違和感を感じて、本当にそれが幸せなのかなぁと、段々疑問に思えてきました。
では、私はどんな時に幸せを感じるのかなと思い起こしてみると、家族や友人たち、更には学びの仲間たち、カウンセリングや対話会のクライアントさんとの交わりを通して、気づきを頂いた時や何かお役に立てた時にしみじみと幸せになります。
昨日、いろいろなことを自分でやりたくなっている4歳の孫が、母親に向かって「ぼく役に立っている?」と尋ねている姿に接して、とても微笑ましく、こうやって子どもから大人に成長していくのだなと感慨深い思いがしました。
愛されて世話をされることの多い小さな子どもでも、愛すること・誰かの何かの役に立って喜ばれることが嬉しいのですね。

研修で依頼されたテーマに取り組む

昨年から研修を担当させていただいている対人支援施設で、「職員の方々が利用者の方に面談をされるに当たっての、質問の仕方・コミュニケーションなどのスキルや心構えについて」という研修課題をいただきました。
これまでにお話させていただいた、「傾聴」「マズローの欲求五段階説」「質問について」「VAKモデル」…は、活用していただけるなと思い、それらを目的に応じて要点をまとめ直すこと、それに加えてラポール(信頼関係)を築くために必要な2点のお話をさせていただこうと考えています。
1つは「スポンサーシップ」、もう一つは「リーダーシップの基台となる『保護者』の意識」です。
人は誰しも、「大切に扱われたい」「大事に思われたい」という欲求があります。
少し分かり易く、これらを詳細に見ていこうと思います。

「スポンサーシップ」とは?

ビジネス的には、「企業などがスポーツや文化事業、芸術イベントなどに経済的な援助をしたり、物や人を出して支援すること」を言います。
心理学で言う「スポンサーシップ」は、NLP(神経言語プログラミング)、別名「脳と心の取扱説明書」と呼ばれる効果的な言語学・心理療法のスキルの1つとして活用されています。
「相手の本質を承認し、受け入れること」すなわち「存在承認」のことです。
相手を否定したり判断をすることなく、存在そのものをあるがままに受け止め、理解するという、安心・安全の場を築くことです。
イソップ童話『北風と太陽』の教訓のように、まるごと包み込む感じです。
ぽかぽかと温かい太陽の下で、相手は自然と自分の殻を脱いで、自尊心や自己信頼を取り戻して自立に向かいやすくなります。
心を開いて共にいてくれる人の前では、本当に話したいこと、相談したいことなどを躊躇せずに語ることが出来るようになります。
そこでは、「他者承認と自己承認」が同時に築かれます。

もう一つ、「リーダーシップ」の資質として、必須条件とされることに『保護者』が挙げられます。いわゆる「親心」と呼ばれるもので、丸ごと包み込む優しさ・器の大きさは、先の「スポンサーシップ」と共通しています。
どちらも大切で、人にも自分にもそうありたいと心から願いながら、実生活で様々な出来事・人間関係の中では、うまく自分がコントロールできなかったりする場が多々あり、落ち込むこともありますが、失敗に気付いたら反省して謝る素直さで乗り越えて、努力を重ねるしかないかなと思う甘い自分が居ます。
先日も、自分本位で苛立ちを覚えて大人気ない振る舞いをしてしまいました。
幸いにも、その日のうちに反省して謝ることができました。
相手の器の大きさに救われて、「すぐに謝れるのは長所ですね」とかえって承認されて、ちょっぴり恥ずかしかったです。
私にとって、研修テーマは自分を顧みる有難い機会となっています。
幾つになってもまだまだ成長を目指して、これからも歩み続けたいと思っています。

(2023年3月5日 若杉)

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