村上春樹と河合隼雄、それぞれの第一印象が面白い

村上春樹氏からの印象

昨年『職業としての小説家』という本が出て、興味深く読みました。
村上氏がどのように小説家になったのか、どんな生活の中からあれらの小説が生まれたのか、
氏にとって小説を書くとはどんなことなのか、豊富なエピソードが満載です。

 

この本の最後に心理療法家、河合隼雄氏との思い出が語られていますます。

「プリンストン大学で、僕は初めて河合先生にお目にかかりました。
まず2人だけで30分ほど話したのですが、初対面の印象は『ずいぶん無口で暗い感じの人だな』というものでした。
いちばんびっくりしたのはその目でした。
目が据わっているというか、なんとなく「どろん」としているんです。
奥が見えない。これは、言い方はちょっと悪いかもしれませんが、尋常の人の目じゃないと僕は感じました。
何かしら重い、「含みのある目」です」(『職業としての小説家』より転載)

「どろん」という表現が興味深いですが、その後2度目に会った時は、河合氏は打って変わったように上機嫌で、ひっきりなしに冗談を口にしていた
と書かれています。
おそらく自分を無に近づけ、相手の「ありよう」をテキストとしてあるがままに吸い込もうとしておられたのだろうと、村上氏は推測しています。
自分も時々同じようなことをするから、わかるのだと。

河合隼雄氏からの印象

同じ場面について、河合氏が書いた文章もあります。

「僕が最初に村上さんと会ったのは、『ねじまき鳥クロニクル』を書いておられる最中でした。
ものすごく印象的だったのは、はじめて会ったとき僕を見ておられないのです。
目が向こうのほう、もっともっと遠いところを見ておられるのです。
『すごいな、これは。もう、創作モードに入っている人だから変なことを言うてはいかん』と、対談するのにものすごく心を使いました」
(『河合隼雄の読書人生』より転載)

お二人がそれぞれに人間を観察することを仕事にしている方々だからこそ、その出会い方も相手の非凡さに心を打たれた感じがでています。

そして、意外に観察している自分が相手にどう見られているのかについてはお二人ともあまり意識していないみたいです。
その辺りは私たちと変わらなくて、親しみが湧きます。

お二人の対談の本も出版されています。こちらもおすすめです。

(2017年3月11日 岩田)

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