話し方のスキルだけでは十分ではない

琴線にふれる話

琴線とは琴の糸。ものごとに感動しやすい心を琴の糸にたとえたもの。
良いものや、素晴らしいものに触れて感銘を受けることをいう。「心の琴線にふれる」という言い方もする。
あまり使われなくなっているかもしれませんが、美しい言葉だと思います。
もちろん、人によってその琴線は反応の仕方が違うはずです。
ある人にとっては特に強く感動する話も、他の人にとってはそれほどでもない、ということはよくあります。
その違いそのものがどこまでも興味深く感じられます。

さて、5月の連休中は毎年東京で学びの場に参加することが恒例になっています。
そこでの目的のひとつは、あえて言うと「人間理解を深めながら自己成長を図ること」です。
その場では講師の話を聴くだけではなく、全体の場で誰かが発言したり、グループでシェアをし合う機会がたくさんあります。
どの発言も貴重なのですが、時々、とても心を打たれることがあります。
それは多くの場合、話す人が自分をとりつくろわず、素直に気づいたことを語っている時です。
私たちは無意識に自分を良く見せるようとし、言葉を飾ってしまいがちですが、飾らない言葉は心に響きます。
そして聴く人の何かを動かす力をもっています。

伝える力はスキルを超えたところに存在する

今月、話し方の講座を開催しますが、難しさも感じています。
本来の伝える力は、スキルを超えたところに存在するからです。
スキルがあったとしても上手く話せる時と話せない時があるということです。
私の場合でも、言葉がどこか上滑りしていたり、たどたどしくなってしまうことがあります。
一方で「こんな言葉が出てくるんだ」と、自分で自分の話し方に驚くほどスムーズに話せるときもあるのです。
「プロなら、いつも一定のレベルじゃないと」とお叱りを受けそうですが…。
(弁解するわけではありませんが、一応努力はしています)
実は、話し手と聴き手が協力してつくっている「場」というものが大きく作用しています。
互いに信頼関係があり、真摯に相手の話を聴きたいと思っている「場」なら、言葉に力が宿ります。
普段話下手だと思っている人でも、言葉がスムーズに出てきやすいでしょう。
が、相手に理解してもらえるかどうか不安な「場」なら、言葉にすることにも勇気が必要になり、結果的に伝わりにくい話し方になってしまいます。
話し方を磨くということは、いかに目の前の人と「安心な場」を築いていくかということでもあるのです。
5月27日の講座では、そんなことも含め、「伝わる話し方」をみなさんとともに考えていきたいと思っています。

「伝わる話し方」講座

(2018年5月6日 岩田)

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