『デンマークの親は子どもを褒めない』

世界一幸せな国の子育ては学校教育や企業の人材育成の参考にもなる

「世界の幸せな国ランキング」というのがあります。
毎年国連が発表しているもので、日本は昨年53位、今年が51位になっています。
北欧4か国はトップ10の常連国ですが、特にデンマークはここ5年間で、1位を3回、2位を1回、3位を1回という好成績です。
今年は2位だったものの、世界一幸せな国のひとつであることは間違いありません。

なぜデンマークは幸せな国なのか?
その問いに答えようとしたのが、この本です。

著者たちは、デンマーク人の幸福の秘密は子育てに秘訣があると考えました。
デンマーク的な思想と子育てスタイルが、「レジリエンス(折れない心)を持つ情緒が安定した幸せな子ども」を育み、その子どもが大人になって再び同じスタイルで子どもを育てるという循環によって幸福な社会を作り出しているというのです。

そのデンマーク流子育てのポイントは下の6つです。(矢印の右側はその結果として子どもが獲得するものを岩田がまとめたもの)
①遊ぶ → 自由遊びを通して自力で学び育つ
②ありのままを見る → 自身と他人に正直になる勇気をもつ
③視点を変える → ものごとに対する極端な思い込みをなくす
④共感力 → 他者への理解を深めることを学ぶ
⑤叩かない → 自制心を保つ親から、暴力による解決はないことを学ぶ
⑥仲間と心地よくつながる → ヒュゲ(共に居心地よく過ごす)で家族や友人との健全な生き方を身につける

正直、20年ぐらい前にこの本を読めていたらもう少しマシな子育てができたかもしれないなぁと、残念に思う自分がいました。
これからお子さんを育てていく方にはぜひ読んでもらいたいと思いました。

しかし子育てをしていないとしてもがっかりする必要はありません。
上の6つのポイントは部下や後輩を育てる立場の人たちにも重要なものです。
本の中にはひとつひとつのポイントに具体的なヒントがいくつもまとめられています。
応用しようという意思さえあれば、使い道は多様です。
デンマーク人を意識しながら、いろいろ試してみるのはどうでしょうか?

現実的な楽観主義

ポイント②の「ありのままを見る」というところで印象的だったことがあります。
デンマーク映画の結末は、ハリウッド映画とは対照的に、陰鬱(いんうつ)で寂しく悲劇的なことが非常に多いのだそうです。
アメリカ人におなじみの(ということは日本人にもおなじみの)幸福なエンディングははるかに少ないのだとか。
そんな映画を観ているのに、デンマークの人はなぜ幸せなのか?

オハイオ州立大学のシルビア・ノブロック=ウェスターウィック教授によると、悲劇的な映画を観ることは、シンプルな日常生活への感謝の気持ちを生むそうです。
たしかにハッピーエンドの物語はどこかで自分の境遇との比較を生み、みじめな気分を誘うことがあります。
また、ハッピーエンドの物語に慣れてしまうと普段の生活の中にある素晴らしさを見つけることが困難になるというのにもうなずけます。

デンマーク人は人生のあらゆる側面をありのままに観察することを大事にする。
だから悲劇やショッキングな出来事もきちんと語られるべきだという考え方です。
ショッキングな出来事に直面したら、さまざまな感情が生まれますが、それも受け入れる。
そして現実的に対処する術(すべ)を学んでいく。
ストレスのかかる状況の見方を変えることもその術です。
その究極の心は「現実的な楽観主義」。
過剰に前向きで楽観的になるのではなく、ネガティブな状況の中にポジティブな面を見つける、ものごとを善悪や白黒だけで見ず、その中間の濃淡を見るような姿勢です。

デンマークの人がすべてそうなのかどうかはわかりませんが、私たちが学べるところは多いですね。

(2017年12月20日 岩田)

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