「怖い絵」展で考えた「怖い」の意味

「恐い絵」ではなく「怖い絵」

「こわい」という言葉は、「恐い」と「怖い」という漢字が当てられます。
どらちを使うのがいいんだろう?と迷うことがたびたびありました。
なんとなく「怖い」の方が奥深い心理にふれているようなイメージをもってはいましたが、あえて調べもせず、今日まで過ごしてきました。

今日、兵庫県立美術館で「怖い絵」展を観たことがきっかけで、やっぱり調べてみました。

学研の『ビジュアル版全訳用例・漢和辞典』(加納喜光 編)によると、
「恐」は、「穴を開けて突き通す+心」という組み合わせで、かなりインパクトを感じます。
一方「怖」は、「薄っぺらなものにくっつかれる+心」という組み合わせで、ひやひやする、ぞっとするというような、より微細な感覚を伴うもののようです。

中野京子著『「怖い絵」で人間を読む』をはじめとするシリーズは大好きで、何冊か読みました。
時代背景や意図を知ることで絵を読み解く面白さを教えてもらいました。
本の主要絵画を一堂に集めたこの展覧会に行ってみた結果、やはり「怖い絵」なのだなぁと思った次第です。

展覧会は大人気でした

兵庫での展覧会の期間は7月22日~9月18日。
会期終盤は人も多くなるといわれるようですが、平日なのでゆっくり観られるのではないかという期待もあったのです。
が、それは見事に裏切られました。
当日券を買う、音声ガイドを借りるのはもちろん、出口にある売店の会計まで、ちょっとした行列になっていました。
もちろん会場内も結構な人で埋めつくされていました。

みんなどれだけ「怖いもの」を観たいのでしょうね?
(私もそのひとりでしたが…)

展覧会では6章に分けられた80点を超える絵画が展示されています。
神話と聖書、悪魔・地獄・怪物、異界と幻視、現実、崇高の風景、歴史という区分もまた興味深いものでした。
実物の絵画はそれぞれに存在感があり、なんらかの形で描かれた「怖れ」が迫ってくるように感じたものも多かったです。
恐怖が直接的に描かれているものもありますが、一見おだやかな日常のように見えるものもあります。
しかし、それらの背景や物語を知ることで、結局は人間が歴史を通してずっと抱えてきたさまざまな「怖れ」を受け取ることになるのです。

中でも、展覧会のポスターに描かれている「レディ・ジェーン・グレイの処刑」という絵は、圧倒的な迫力でした。


(上の写真は絵の一部で、美術館の入り口に置かれていたパネルを撮影したものです)

16世紀半ば、わずか9日間だけ女王だったという女性。
16歳という若さで政争に巻き込まれ、処刑される前の瞬間を切り取った絵です。
運命に翻弄されたこの少女は死を前にしてどんな気持ちだったのでしょう。
また、そういう歴史を知ることで人々に喚起された「怖れ」とはどんなものだったのでしょう。

平和な日々の中では眠っているかのようにみえる「怖れ」ですが、決して無視すべきものではないと感じた体験でした。

(2017年9月12日 岩田)

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