池谷裕二『自分では気づかないココロの盲点』

本当の自分を知る練習問題80

著名な脳研究者である池谷裕二さんの本は、何冊か読みました。
難解な脳の研究を、読者に寄り添うように噛み砕いて説明されているので、私にもわかりやすいのです。
中でもこの本は特に、親しみやすくて気に入っています。

本の構成はシンプルそのもの。
80の練習問題があり、解答と説明が続くというものです。
自分で答えを考えたあと、解答を読むというくり返しによって、人間への理解が進むというしくみは巧みです。

問題の例として…(以下、『自分では気づかないココロの盲点』より転載)

醤油ラーメンが食べたくなりました。
たまたま向かいに繁盛しているラーメン屋があります。
さっそく行列に並びました。
ところが、その店は塩ラーメンで有名なのでしょうか。
周りの客たちは塩ラーメンを注文しています。
このときどちらの行動をとる人が多いでしょうか?

①当初の希望通り醤油ラーメンを注文する
②看板メニューの塩ラーメンを注文する。

あなたならどちらですか?
そして、多くの人はどちらを選ぶと思いますか?

テーマは「認知バイアス」

「認知バイアス」というのは、思考や判断のクセのことで、しばしば多くのミスをおかします。
池谷先生の言葉を借りると、
「このクセは曲者(クセモノ)で、しばしば奇妙で、ときに理不尽です。
しかし、どんなに非合理的に見えても、たいてい何らかの利点が潜んでいます」
ということです。

先ほどの問題、醤油ラーメンか塩ラーメンか、どちらでしたか?
同じ状況に遭遇したら、私は多分塩ラーメンかなぁ。
看板メニューを食べてみたいという単純な好奇心が勝ると思うので…。

で、多くの人の答えは?

②看板メニューの塩ラーメンを注文する。

そう、私もごく一般的な人間でした…。

これは「バンドワゴン効果」と呼ばれるもの。
支持する人が多いものほど、それを選択するのが正しいと思い込む心理現象です。
みんながそうするから、みんながそう言うから…など「同調圧力(社会的圧力)」と呼ばれるものに影響される状態ということです。

確かに「みんなが…」と言われると、安心してそちらを選んでしまうという心の動きは、多かれ少なかれ誰にでもありそうです。

難しい用語も具体例にするとわかりやすいですね。
この本では「認知バイアス」の一通りの理論を学ぶことができます。
私もとても勉強になりました。
さらに、出典の論文が明記(英語ですが)されていたり、錯視用語集、認知バイアス用語集が巻末についていたりと、至れり尽くせりです。

この本をどう役立てる?

人間とはこういうものということがわかっていれば、相手の行動に腹を立てることも少なくなります。
この本の目的はまさに、人間を知り、傾向と対策に役立てることだそうです。

脳を知れば知るほど、自分に対しても他人に対しても優しくなる。
そして、人間って案外かわいいなと思えてくるはず。

池谷先生は「人間が好きになる脳の取り扱い説明書」として本書を役立ててほしいそうです。

(2017年9月3日 岩田)

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