森博嗣『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』

「考える」とは、どういうことなのか?

最近、それを考えることが多くなりました。
思考法というと主にビジネス書が多くなりますが、他の分野でも、さまざまな本が巷にはあふれています。

この本は数多の思考法についての本と一線を画している趣です。
多くの思考法についての本がマニュアルのように具体的なところに焦点を当てていることが多いのに対して、その対極を狙っているからです。
つまり「抽象的思考」を扱っているのです。

かといって、それほど小難しい言葉が並んでいるわけでもないので、結構面白く読めます。
日ごろ、大量の情報にさらされて考える力を失いそうになっている時には良い刺激になります。

本のカバーには「明日をより楽しく、より自由にする『抽象的思考』を養うには?一生つかえる思考の秘訣が詰まった画期的提言」と、書かれています。
実際そこまでかどうかはわかりませんが、時々読み返すと新鮮なのではないかと思って、手元においています。

著者は某国立大学で教えながら、小説も書いてきたという方です。
大学を辞した後は、冬の寒さが厳しい地方で、充実した「忙しくない毎日」を過ごしているとか。
本にはその生活ぶりも描かれていて、なかなか興味深いです。
まさに、自身の抽象的思考を現実の世界で生きている人のだなぁと思いました。

1日6万回の思考?

私たちは始終何かを考えています。
この本には登場しませんが「人は一日に6万回思考する」とは、よく言われる言葉です。
実際、誰がどんな根拠で発表した説なのか私は知らないのですが、とりあえずそのぐらい考えているというのは、なんとなくわかります。
要は6万回のうち、何%かでも生産的なことに結びつけたいということから正しく考えるための方法というのが探求されてきたのでしょう。

多くの人にとって正しく考えるという時の前提は論理的であることです。
いわゆるロジカルシンキングで、垂直的な思考といわれます。
一方で、何かを発想する時には、それだけでは足りません。
このあたりを著者はこんな風に書いています。(以下引用)

僕が感じるところでは、発想するときの思考と、論理を導くときの思考は、まったく頭の違う部分を使っているようにさえ思える。だから、ギアを切り換えるみたいな感覚で、どちらでいくか、それこそ「頭を切り換える」必要がある。

いわゆる水平思考(ラテラルシンキング)も必要だという主張です。
確かに…。

じゃ、どうしたらそんな発想ができるの?と考え出すと思考は具体的になっていくわけです。
抽象的だけにとどまることは難しい、のです。

私の結論は、
抽象的思考と具体的思考
垂直的思考と水平的思考
それらのバランスをとること、
さらには瞬間にどんな思考をしているのかを認識できること、
が大事だなぁという、かなり大雑把なものになってしまいました。

(2017年8月6日 岩田)

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